悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 小さかったわたしは、結局学園に入る運命をたどったけれど、大きくなって今は自分の足で地を蹴って歩いている。悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムではなくて、普通のリジーとして第二の人生を歩みたい。

「わたくし、あなたのことが大好きよ。だから先走るあなたをちょっと心配することもあるの」
「先走る? わたしが?」

 あんまり急いでないけどな。

「自覚ない? あなた生き急いでいるように思えるわ」

 そんなこと考えたこともなかったから、わたしは考え込んだ。

「せっかく来てくれたのに出ていくことばかり考えているのだもの、あなた。ちょっと寂しいわ」

 レイアの言葉にわたしははっとした。
 確かにわたしはいつも今後のことを考えていた。双子たちと遊んでいるときも、お菓子を作っているときも。薬草を採取し始めたのもお金を稼ぐため。独り立ちした時に手持ちがあれば心強いから。

「きっとレイルもわたくしと同じね。あなたのことが心配だったのよ」
「で、でも。だからって勝手に人の素性を調べるなんて」

「調べてきたのは部下なのでしょう?」
「そうだけど……。レイルもその報告書を読んだわ」
「彼にも色々とあるのよ……。部下をもつ身なのだから」

 レイアはレイルの素性を知っている。
 ゼートランドでは結構上の役職についているのかもしれない。だとしたら、時々訪れる黄金竜の住まいにいる人間の少女と、上司が親しくしていると部下としては色々と気になってしまうものなのかもしれない。

 けどさ……。胸の中のわだかまりは消えてくれない。

「あなたが本当に傷ついている理由は別にあるのじゃなくて?」
「別に?」
「そう。例えば、彼には自分の国での評判を知られたくなかった」

 レイアの言葉はわたしの胸の奥に刺さった。まっすぐに。
 そしてそれはすとんと、わたしの心に落ちてきた。

 そうなんだよね。たぶんわたしが気にしていたのはそのことだと思う。わたしが悪役令嬢で、シュタインハルツでのわたしは学園内を牛耳る高飛車公爵令嬢。気に入らない相手をこっそり裏庭に呼んでヤキを入れたり(いっておくけどやってないからね!)、王太子の婚約者であることを笠に着てやりたい放題なわがまま令嬢。どう振舞っても周囲は勝手にわたしをそういう風に作り上げていった。
< 128 / 165 >

この作品をシェア

pagetop