悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「わたくしたちは真実をきちんと知っているわ。レイルにだってわたくしから話してあげるし、なんなら彼の前で魔法で風の記憶を見せることもできる」

「そ、そんな。いいわよ。わたしのために魔法を使うなんて」
「こういうとき頼ってくれないと、黄金竜としてはつまらないのだけれど」

 レイアは寂しそうに嘆息した。

「頼ることが癖になるといけないもの」
「それがあなたの美徳だと思うわ」
「心配してくれる気持ちだけで十分よ」

「わたくしは、あなたと一緒に過ごしてきて、あなたがとってもいい子だっていうことを肌で感じている。レイルだって同じだと思うわ。彼だって自分の目で見たものを基準に冷静に判断する子よ」

「そ、それは……」
 どうだかわからないとわたしは続けようとしたけれど、結局尻すぼみに終わった。

「あなたはレイルに嫌われたくなかったのでしょう」
「え、それは、別に……」

 とは口でいうものの、図星なわけで。
 わたしはただ、レイルに嫌われたくなかった。ただそれだけのことだったわけで。

「でもね、レイルにだって言い分があると思うの。わたくし、あなたたち二人の仲介役くらいにはなれるわ。魔法云々は置いていて、たまには年上のお姉さんらしいことをさせて頂戴な」
「レイア」

 レイアの声がもっともっと柔らかくなる。
 わたしはその申し出に胸の奥がつんとなる。

「だから、そんなにも寂しそうな顔をしないで」
「わたし……寂しがってなんか」
「本当に?」
「うっ……」

 ああもう。

 年上のお姉さんにはかなわないなぁ。

 この空の散歩だって、わたしがもう一度レイルと話し合う決心をつけることができるように彼女が気を聞かせてくれたんだよね。

「レイア、ありがとう」

 正直、まだわだかまりはあるけれど。それでも、そういうものもレイルに吐き出せばいいのか、と思えるくらいに心が軽くなった。

「うふふ。わたくしはただ、あなたと一緒に空の散歩をしたくなっただけよ。楽しめたかしら。子供たちも、もう一度あなたを背中に乗せて飛びたいってうるさいのよ。竜は大好きな人間を背中に乗せてるものだって、言ってきかないの。最初のがあれで、信用できないのも無理はないけれど、母親としてきちんと監督するし、二度目はもっと低空飛行で速度もゆっくりできつく言い聞かせるから、また付き合ってあげてくれないかしら」
「う……」
< 129 / 165 >

この作品をシェア

pagetop