悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 室内は続き間になっていて、レイアは案内されるまま奥の扉を開いた。
 わたしも顔をのぞかせると、フローレンスとアレックスが驚いた様子でわたしたちのことを凝視している。

「どうかしましたか?」
 アレックスが声を出した。
「わたくしの正体に心当たり、ないかしら」

 レイアはアレックスたちをじっと見つめ、自身の内側から大きな魔力の波動を放出した。
 髪の毛がぴりりとする。静電気を浴びているみたい。

 静かに怒りを携えたレイアの魔力に、一同息を呑む。それはアレックスとフローレンスも同じだったようで。

「これは、これは……黄金竜のご婦人。まさかここまで追ってくるとは」
 アレックスは、黄金竜が卵を取り戻しにやってきたのが不思議に思ったらしい。

「当たり前でしょう。あなたたちは、わたくしの友人から何を盗んだのか理解しているの?」
 レイアがついと前に進み出る。

「ああ、当事者の黄金竜ではないのか……。ええもちろん。竜の、卵を持ち出したのです」

 アレックスが頷いた。
 開き直っているのか、それともこれが素なのか。黄金竜の追手たるレイアを前にしても動じていない。

「あなた……リーゼロッテ」

 アレックスの隣で目を見開いているのはフローレンスだ。
 かなりびっくりしているのか、その続きが出てこない。

 うん、わかる。びっくりするよね。死んだと思っていたリーゼロッテが突然金髪美女といっしょに登場するんだもん。

「黄金竜と一緒にリーゼロッテ嬢まで……。あなた、たしか亡くなったのでは」
 と、アレックスもレイアの隣にいるわたしに一度注目。

「まあ、色々とあったのよ」
 わたしは説明が面倒で色々で済ませた。じゃないと話が進まない。

「それよりも、ハルミン先生。あなた今竜の卵と言ったか」
「まさか、この方のおっしゃる至宝とは竜の卵と」

 アレックスの放った言葉のインパクトの方が大事だったのか、学園のお偉いさんたちが驚愕の声を出した。

「ええそうです。わざわざドランブルーグ山岳地域・不可侵山脈、要するに竜の領域まで赴きまして。産卵直後の弱った竜の棲み処から卵を一個もらい受けてきたのです」
「まさか!」
「竜の棲み処と」

 お偉いさんたちが興味を持ったのが空気で分かった。
 だってこの人たちだって魔法使いだもん。そりゃあ気になるよね。
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