悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 二人はきょとんと首をかしげる。
 ビームは通じないか。

「あ、もうちょっと道幅広い方がいい?」
「そういう問題じゃないでしょ」

 ファーナの問いにわたしは項垂れた。ああもう、疲れる。

「どこまでこの道作ったのよ」
「さあ?」

 ファーナが首をこてんと横に傾けた。その仕草可愛いすぎて絵になりすぎている。愛くるしい見た目に反してやることえげつないな、この子どもは。

 竜の棲み処に繋がる一本道がどこまで出来上がったのか考えると恐ろしい。というか、魔法を凝縮した光を突如繰り出して、誰かに当たったらどうするの。

「いきなりあんなことして、誰か通行人に当たったら危ないでしょう」

「だぁってえ」
「リジーのために道を作ってあげたのに」

 わたしが注意をすると二人は頬をぷくーっと膨らませる。あざと可愛いな、と思いつつもしかめ面は崩さない。こういうのは最初が肝心なんだから。

「だぁって、じゃないの。わたしがいつ歩きやすく道を作ってほしいなんて言ったの」

 わたしが言葉を重ねると二人は不満顔でこちらを見上げてきた。
 どうしたものかな。親切心からの行為ってことは分かるんだけど。

 その場で思案していると背後が暗くなった。
 ん? なんだろう。と思う間もなく頭の上から声が聞こえてきた。

「わしの身体に魔法を当てたのはおまえたちか」

 わたしのすぐ目の前にいる双子たちが、うわっ、やばっ、という顔を作った。
 すこししゃがれた声を出す者の正体はいかに。怖いもの見たさで顔を上げてみることにした。

「大杉のおじいちゃま!」

 そこにいたのは、うす緑色の肌に木の枝のような髪を持った老人の姿をした、精霊。
 フェイルとファーナがわたしの体に隠れるようにぴたりとくっついてきた。

「おまえたち。ふざけ半分で魔法を使うのは止めるように再三にわたって言っておるよな」
「ふざけてないもん。リジーを手伝おうと思ったんだもん」

 わたしの体にぴたりとくっつきながらもフェイルが果敢に言い返す。
 と、その言葉に老人精霊がぴくりと眉のような、細い木の棒を持ち上げる。

「はて。人間の娘がいるな」

 おそらくは長い年月を経た木の精霊なのだろう、老人はわたしに顔を近づけてきた。人間の王国の、それも王都で暮らしていたわたしにとって生の精霊というのは滅多に出会わないレアキャラに等しい存在で。
 人生十七年、初めての遭遇でわたしの心臓が早鐘を打つ。
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