悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 ゲームをプレイしていた時だって、竜の貴公子なんて隠れキャラもいいところだったし、わたしの中で黄金竜とはレアキャラ扱いだ。それが今はそのレアキャラに囲まれて生活をしている。人生何があるか分からない。

「あの夫妻は黄金竜の中でもかなり人間に対して好意的だと思う。ここも人の村に近いし」
「ここってそんなにも人里に近いの?」
「ああ。シュタインハルツの外れの村まで歩くと……どのくらいだろうな。三日くらいかな。それとも四日か? わからないが、そのくらいの距離だ」

 彼の言葉を借りるとまあまあ近いということらしい。
 距離感はまだよくわからないけれど、近くに人の集落があるって情報が分かっただけでもちょっと安心。シュタインハルツっていうのがちょっとあれだけど。国境近くの辺境ならわたしの噂も届いていないと思うし、いつか行ってみたいかも。

「あ、リジーってば何を食べているの?」

 絵本に飽きたのかファーナがわたしたちの元へとやってくる。今日も屋外にテーブルを出してもらって、わたしとレイルは向かい合う形で座っている。

「レイルの持ってきてくれたお土産。マフィンっていうのよ」
 きつね色に焼けたマフィンをじぃっと見つめるファーナ。

「人間は色々なものを食べるのね」
「竜は食べないんだっけ」

「黄金竜はこの世界に存在をする魔法力を体に取り込むんだよ。だけど、僕たちはまだその力が弱いからお父様とお母様から魔法力を分けてもらったり、魔水晶を食べるんだ」
「最近は自分たちの力だけで魔法力を吸収できるようになったよ」

「わたしたち、もう立派ないちにんまえ、なのよ」
「あ、でも人間の食べ物も食べられるよ」

 フェイルとファーナが交互に説明をしてくれた。
 魔水晶とは、この世界の魔法力が結晶化したもの。魔法力の濃い場所に生まれる。

 人間の世界でも取引をされているが、滅多に見つかるものではないので基本高値がつく。わたしたち魔法使いは、魔水晶を魔力を補うマジックアイテムとして使う。

「食べてみる?」
「いいの?」

 ファーナは目をくりくりさせて、鼻をマフィンに近づける。すんすんと匂いを嗅いで、恐る恐る一口。

「わぁぁ。柔らかぁい。甘い」
「僕も一口~」
「はいはい。まだあるからお食べなさい」

 わたしの膝の上によじ登ったフェイルは手を伸ばして皿の上のマフィンを取る。
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