悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「ああ~わたしもリジーのおひざに座るのぉ」

 一人がすればもう一人が真似したがるのは世の兄妹の必然か。ファーナがフェイルの袖を引っ張る。

「ファーナはまずその尻尾を仕舞わないと」
「むぅ……」

 フェイルに突っ込まれてファーナが頬をぷくぷく膨らませる。

「まったく賑やかなんだから。ファーナは一度竜の姿に戻ってもう一度人の姿になってみたら?」
「はあい」

 ファーナがとたたっとその場から離れる。

「結構様になってきているじゃないか、二人の世話役も」
「そりゃあ一緒に暮らしはじめてそろそろ二週間になるしね。でも、様になってきているというかまだ完全に遊ばれている気がするけど」

「リジーと遊ぶの楽しいよ」
 マフィンにかぶりついていたフェイルが上を見上げる。

「今日は大分大人しかったけどな」
「そうねえ。レイルの持ってきた絵本がきいたのかも」
 人間の世界のものが珍しいのか二人にしては大人しかった。

「要するに、二人の意識をどう別のものに向けるか、だな」
「別のところ?」
「そう。マフィン食ってるフェイルは大人しいだろ」
「確かに」

 わたしは膝の上にちょんと座って人間のお菓子を頬張るフェイルを見下ろした。

「魔水晶と違ってシャリシャリしないね」
「あなたのお腹的には大丈夫なの?」

 勝手に人間の食べ物与えて平気だったかなと今更ながらに不安になる。

「んー、大丈夫。お母様もお父様も人の食べ物たまに食べるんだよぉ~」
「そうなんだ」

 それは初めて知った。

 そっか。意識を別のところに向けるのか。それは、ちょっと……一考の余地はあるかも。
 わたしはレイルの存在も忘れて物思いにふけった。

◇◆◇

 レイルからアドバイス的なものを貰って数日後。
 わたしはフェイルとファーナの前にエプロン姿で立っていた。

「それでは。突発リジーちゃんのお菓子教室を始めたいと思います」

 わたしの高らかな宣言に二人は揃って首をかしげる。人の姿でそれをやられるとにやけそうになる。だって、はた目にはめっちゃ可愛いんだもん、この双子。

「お菓子教室?」
「ってなあに?」

 二人のつぶやきにわたしはふふんと胸を反る。

「この間レイルが持ってきたような甘いお菓子をわたしが作ってあげようってことよ。もちろんふたりにもお手伝いをしてもらいます」
 わたしの言葉に、途端に二人は顔を輝かせる。
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