悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 後ろにぱぁぁって文字が浮かんできそうなくらいのきらっきらした視線がわたしに突き刺さる。

「すごいすごい!」
「リジーはあのお菓子作れるの?」
「まあね」

 なにせ前世は日本人女子でしたから。お菓子作りはばっちりよ、って言いたいけれど前世では普通の料理はしたことはあったけれど、お菓子についてはほぼド素人。それがどうしてお菓子作れるかっていうと、乙女ゲームなこの世界では、貴族の娘でもお菓子作りは高尚な趣味として認められているから。

 なぜかって、ゲーム中攻略対象に手作りお菓子を差し入れるというイベントがあるから。わたしが前世にプレイしていた時もヒロインのフローレンスにせっせとお菓子を作らせて攻略対象にプレゼントしていた。ひねくれた攻略対象だと逆効果だったけど。

 まあそんなわけで、前世ではからきしだったお菓子作りも、こちらにリーゼロッテと転生してからは貴族的嗜みの一環で一通り習っていたわけ。

 ヴァイオレンツと婚約したあと、一応社交辞令でお菓子作ってあげますよ的なこと言ってみたけど、全部見事に玉砕だったけどね。心底冷たくあしらわれたけどね。こっちだって社交辞令だしね。本気じゃなかったからね。あんな冷たい顔しなくてもいいじゃんね。ほんっとつくづくフローレンス以外には無関心だよね、あの男。

「それではお菓子作りを始めたいと思います」

 わたしたちはミゼルたちに頼んで突貫で作ってもらった人間用の厨房へと移動した。

 わたしの企みを聞いたミゼルとレイアが「頑張ってみて」と笑顔で賛同してくれてぱぱっと作ってくれた。

 どうやって作ったかって。それはもう魔法の力でちょいちょいっと、としか言えない。魔法が便利すぎてすごい。

 厨房ということで洞窟内とはいえ外に近い区画に作ってもらった。換気とか必要だしね。

 これからつくるのは簡単に作れるパンケーキ。

 一応わたしも貴族の令嬢としてお菓子作りの先生に師事を仰いだこともあったけれど、どうせ覚えても作る相手もいないしとこの数年はさぼっていた。

 ティティがどこからか手に入れてきたお菓子作りの本を片手に、まずは簡単なところから始めることにしたのだ。

「まずは小麦粉をふるいにかけます」
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