悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 材料はドルムントとティティが用意してくれたけど、こういう食材ってどこから調達しているのかな。謎だよね。けど答えを聞くのも怖いのでそこはスルーすることにしている。

 わたしは手際よく作業を進めていく。分量を量って卵を割って。
 途中ファーナに生地を混ぜるのを任せて、フェイルにはトッピング用のクリームの泡立てをお願いした。

「腕疲れたよ。魔法でぐわぁぁってやりたい」
「ダァメ。フェイル、あなた魔法の加減てものを知らないじゃない」

 フェイルが物騒なことを言いだしたのでわたしは慌てて釘をさす。

「ファーナと交代してあげる」
「じゃあお願い」

 フェイルはファーナの申し出を素直に聞き入れた。単調な作業に早くも飽きたらしい。
 わたしは最新式のキッチン用レンジに火を入れることにする。

「リジー様にはこちらを差し上げますぅ」

 キッチン用レンジを興味深そうに眺めていたティティは自身の髪飾りを取って、それをぎゅっと握って息を優しく吹きかけた。

「なあに?」

 ぱっとわたしの目の前で手を開くティティ。
 手のひらには深紅のまるい石。石の深部に炎の揺らめきのようなものを見つけたわたしはティティの顔を見た。

「うふふ。わたしの炎を閉じ込めた石ですぅ。これを使うとあら不思議、燃料無しでリジー様の魔力に反応して炎を出すことができるのですぅ」
「魔水晶のようなものね。うわ。精霊が魔力を込めた石って初めて見たわ」
「人間社会に溶け込む精霊ってある意味希少種ですからねー」

 ティティはくるくると回る。
 精霊の中には気まぐれで人間を守護するものもいる。

 というかわたしも前世でフローレンスとしてプレイをしていたから知っています。オープニングで風の精霊と出会って加護を受けるのよね。これはいわばボーナスラック。その後のイベントをこなしていく過程でフローレンスは他の炎や水・土などの精霊から加護を受けるチャンスがある。全部の精霊を集めるとスキルが上がって超レアキャラ竜の貴公子と遭遇する確率があがる。

「まさかこんなレアなものを貸してもらえるとは」

 ほら、わたし悪役令嬢に転生したから。
 そういう、愛されキャラとは無縁だったわけで。だからこちらの世界に転生して、生の精霊からゲームままの魔法石を受け取ったことにちょっと、いやかなり感動。

「お料理に役立ててください」
「ありがとうティティ」
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