悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしはティティお礼を言って火の調整を始めた。

 何度か使ってみてコツのようなものを掴んだわたしはパンケーキを焼くのにちょうどいいくらいの火加減にして、フライパンを熱していく。

 熱したフライパンに生地を落として待つこと数分。

「ぷくぷくしてきたよ」

 わたしの傍らで熱心にフライパンを眺めていたファーナとフェイルがそわそわ肩を揺らす。
 パンケーキの生地に泡が浮かんできたところでわたしは生地をひっくり返す。

「うわぁぁ。いいにおい!」

 双子たちが鼻をすんすんとさせる。台所には、ほのかに甘い香りがただよっている。わたしも大好きな、お菓子が出来上がる瞬間の幸せな匂いに自然と口元がほころんでしまう。

「わたしもやるぅ」
「僕も、僕も」

 どこの世界でも子供って大人の真似をしたがるものなのね。そういえば前世で甥っ子と姪っ子にパンケーキ作ってあげたことあったっけ、なんてことをわたしは思い出す。

「はいはい。ちゃっちゃとやらないと焦げちゃうからね。わたしと一緒に、順番に」

 わたしはその場をきりきりと仕切ってパンケーキを焼き上げていった。
 お皿に盛った後は、各自トッピング。
 三段重ねにしたパンケーキの上にクリームをたっぷりと絞り出す。

「最近運動っていうか、動きまくっているからこれくらいは許される……はず(だと信じている)」

 わたしの、自分に言い聞かせるようなつぶやきをティティが不思議そうに眺めている。これはもう、乙女の儀式のようなもの。甘い物の塊を前に罪悪感を押し流すための。

 クリームを盛り盛りした周りにカットフルーツを散らばせて。

「リジーちゃん特製パンケーキの出来上がりです!」
 思わず料理番組風にわたしはでーんと両腕を前に伸ばした。

「うわぁ。人間のお菓子ですですぅ」
 物珍しそうにパンケーキの周りをふよふよ飛ぶのはティティだ。

「われながら美味しそうに出来上がったわ」

 わたしは久しぶりのお菓子作りの達成感を味わうように、額の汗をぬぐう仕草をする。

 さて、自分たちで作ったお菓子を前に、フェイルとファーナはどんなものかと下を見ると、二人とも固まっていた。

 あら、あんまり好きじゃなかったかな、こういうの、と思ったが。
 よおく見ると二人は目を輝かせながらパンケーキに釘付けだった。
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