悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしたちはミゼルたちの住まいから少し離れた森の中にいた。ちびっこ竜のお世話役に収まったわたしは、森の中を歩いても延々とぐるぐる同じ場所を歩き回る……という嫌がらせには遭っていない。

 わたしたちは、森の精霊から教えてもらった野イチゴが自生している場所へとやってきた。目的はもちろん野イチゴ狩り。なにしろ季節は春真っ盛り。ベリー類の美味しい季節ということで、双子たちの遊びと実利を兼ねて森の恵みを収穫することにした。

「人の子よ、わかっておろうな。取りすぎたら駄目ぞ」

 目の前にはたわわに生る真っ赤な野イチゴ。年甲斐もなく目をキラキラさせているところに、薄緑色の肌をした、妙齢の女性がぬるりと地面から現れた。
 言わずと知れた森に住まう精霊だ。

「わかっているわ。取りすぎないように気を付ける」
 わたしは神妙に頷いた。

「それとな。くれぐれも竜の子供たちのことをよく見張っておくのだぞ」
「それもわかってます」

 あー、どっちかというとそっちの心配のが本命か。口調が若干強くなったし。

 フェイルとファーナは今日も人間に変身をしている。

 最近ずっと人の姿に化けているのだ。わたしと一緒に遊ぶにはそっちのほうが都合がいいから。とはいえずっとは化けていられないのでお昼寝するときとか、日中適度に竜の姿にも戻っているけれど。

「ねー、リジー早く早く」
 フェイルが待ちきれなさそうにわたしの服の裾をつんつんと引っ張る。
「はいはい」

 まあ待ちきれないのはわたしも一緒か。果物狩りってなんでこうもテンションが上がるんだろう。しかも真っ赤に売れた野イチゴは宝石みたいにキラキラしているし。

「このちっちゃいのを人間は食べるの?」
 ファーナが不思議そうに聞いてくる。

「そうね。人間だけじゃなくて鳥とかも野イチゴを食べるわよ。だからわたしたちが全部採ったらダメなの。じゃないと鳥さんがお腹空かせちゃうでしょう」
 わたしは二人に視線を合わせて説明をする。

「鳥さんて、あの小さい子?」

 フェイルが指さした先には小鳥の姿があった。
 わたしは頷いた。

「わたしたちよりとってもちっさいね」
「僕たちも今は人間に変身しているから普段よりも小さいよ」
「それよりも小さいよ」

 二人は小さい小さいと繰り返す。

「はいはい。各自で持っているこの籠が一杯になったら今日のいちご狩りは終了ね」
< 51 / 165 >

この作品をシェア

pagetop