悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしの言葉に二人は「はあい」と声をそろえた。

 赤く熟れた実だけを取るのよ、と教えたあとは銘々野イチゴを摘んでいく。わたしは一粒口の中に放り込む。うん、甘酸っぱくて美味しい。

 いいなあ。楽しいなあ。なんか、田舎暮らしをしているみたい。そういえばわたし、物心ついたときから勉強ばかりだったし、記憶が戻った後も一応は貴族の令嬢として恥ずかしくないように勉強だけは手を抜かないようにしていたから(この世界で生きていくんだから知識は大切だよね)、こういうのんびりした生活ってリーゼロッテとして生きてきた中では初めてかも。

「リジーの真似ー」

 ファーナのそんな言葉に釣られてわたしがそちらのほうを見ると、ファーナも摘んだ野イチゴを口の中に放り込んだ。

 もぐもぐ口を動かして、首を横に倒した。

「んー。あんまり甘くないよぉ」

 ってちょっとだけ口をとがらせる。まあ森の中に自然に生えている野イチゴだから子供受けする甘さってわけではないけれど。

 わたしは苦笑して、「帰ったらこれでジャムを作ろうと思って」と説明をした。

「ジャム? なあに、それ」
「果物と砂糖を煮て作るの」
「それって甘い?」

 わたしの説明にフェイルが重ねて質問をしてきた。

「そうねえ。甘いわね」
「じゃあジャム作るー」
「ファーナも!」

 やっぱり子供は甘い方がお好きってことかな。

「じゃあ張り切って野イチゴを摘んでいくわよ」
 わたしの高らかな宣言と共にフェイルとファーナが歓声を上げた。

◇◆◇

 摘んできた野イチゴを軽く水洗い。沢の水は冷たくて双子たちは竜の姿に戻って、水遊びを始めるものだからわたしは摘んできたばかりの野イチゴが犠牲にならないよう必死に庇った。
 まったく、隙あらば暴れるんだから。

「こおら。あんまりおいたがすぎるとジャムつくらないわよ!」

 わたしが怖い声を出すと、二人はぴたりと動きを止めた。
 ふっ。ちょろい。

 水洗いをした野イチゴはドルムントが風を使って乾かしてくれた。風の精霊さん素晴らしか。
 お菓子作りをするにあたってティティが食材を色々と仕入れてきてくれていて、わたしはその中からレモンを探し出す。

 砂糖の分量を量って、野イチゴと砂糖を鍋に入れて火にかける。

「ジャームジャムジャム」

 鍋の中を覗き込みながら独特のテンポでジャムと連呼するのはファーナだ。
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