悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 前世の記憶が戻ってからどうにも二十六歳な感覚で物事を俯瞰してみちゃう癖がついちゃったから……。
 さっき言われた年寄りくさいって発言。わたしはちゃんと覚えているからね。

「つうか、リジーだっていいところのお嬢さん、だろ」
「うっ……。どうしてそう思うのよ」

「まあいろいろ。手とか荒れてないし。ティティから世話されるのにも動じてないというか、慣れている感じもするし」

 結構細かいところまでよく見ているね。
 引きつったわたしの顔を見たレイルはぽんっとわたしの頭の上に手のひらを乗せた。

「まあ、あんまり深く聞くつもりはないよ。ここは竜の領域だし」

 そう言って彼は盛り付けたアイスクリームの入った器をお盆の上に乗せていく。
 厨房から先に出て行ったレイルを見送ったわたしは大きくため息を吐いた。

 わたしだって彼のことをちょっと観察していれば、彼がいいところの出だということくらい分かる。きっとレイルにとっても同じなんだよね。

 彼からしたらわたしも同じように映っているのかも。
 素性を隠すのって難しいなあ。



 ちなみに作ったアイスクリームは大盛況で、ふわふわしているのに冷たくて口の中で溶けちゃう、ってファーナもフェイルもついでに竜の夫妻も大絶賛だった。

 手作りジャムもアイスクリームにかけてみたりして、そうすると味が変わって楽しいわね、とレイアが感心してくれた。

 次は自分たちで魔法を使うところからアイスクリームをつくりたい、って双子たちが騒いだのけれど、黄金竜は水系の魔法とはあまり相性が良くないみたいで、双子たちにはまだ早いらしい。それでも魔法の練習頑張るとフェイルが言うとファーナも負けじと頑張る宣言をするのだから目の前に目標があるってすごいなと感心してしまった。

 え、わたしはアイスクリームにそこまでの執着を持っていないから別にいいかな。魔法の練習しなくても。

 とりあえずつくったジャムは早々に消費してしまったので、わたしたちは翌日もまた野イチゴを採りに、今度は森の別の場所に行ったのでした。
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