悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「ありがとう。美味しかったわ」
 ルーンはパンケーキのアイスクリーム添えを完食した。

「わたし人間のお菓子大好きなの」
「甘いもんね」
「甘いのを食べると幸せになるってリジーが教えてくれたんだよ」
「ほっぺが溶けちゃうんだって」

 と、フェイルが両手を頬に当ててとろんと目をつむる。

 えっと、それってもしかしなくてもこの前わたしがやった顔真似かな?

 まったく。子供ってすぐにそうやって大人の真似をするんだから。でもまあ、ルーンがほほえましそうにフェイルを眺めているから、まあいいか。彼女の纏う雰囲気が先ほどよりも柔らかくなってきたし。

「リジーはすごいんだよ。いろんなお菓子の作り方を知っているの!」
「あ、でも怒ると怖いんだけどね」

「髪の毛梳かしてくれるのよ」
「お母様とお父様の次に大好きなんだよ」

「あ、あら。ありがとう」
「えへへ」

 褒めてもらった上に好き発言まで。そうやって言われるとちょっと、いやかなり照れてしまう。今のわたし、確実にほっぺが真っ赤だと思う。

「褒めたから明日もおやつー」
「おやつー」
「あなたたちね……」

 もう、ちゃっかりしているんだから。
 わたしが呆れ交じりにため息をはあぁぁって吐くと、ルーンがくすくすと笑いだした。
 ま、和やかなムードだし、いっか。これはこれで。

◇◆◇

 今日は午後から森へとやってきた。
 ここでの生活にもだいぶ慣れてきたわたしは、森の精霊たちとも顔見知りになってきた。最近では精霊たちから森に自生している植物について教えてもらっている。

 人間が食べても平気なものや、薬効のあるものなど。要するに薬草についてご教授いただいているというわけ。

「ねーねー、リジーちょっと耳塞いでいてね」

 わたしが薬草をちまちま引き抜いているとファーナがとたたとやってきた。
 やってきたついでにわたしの耳を塞ぐ。

「ん?」

 しゃがんだわたしの後ろからファーナは抱き着くようにぴたりと張り付いた状態。
 んー、なにか嫌な予感がする。

「ちょっとなに―」
 わたしが口を開きかけたのと、強烈な叫び声が聞こえてきたのは同時だった。

『ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』

 わたしの意識が一瞬持って行かれそうになる。
 塞がれているのに、耳の中に地獄の底から恨みを聞かされているような、強烈な絶叫が聞こえてきた。
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