悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしは頭がくらんくらんとした。

「あ……あたまが……」
「リジー大丈夫?」

 ファーナが気遣わし気な声を掛けてくる。
 しかし。

「あなたたち……ね」

 文句を言おうとしたとき、頭上からばさばさと何かが落っこちてきた。
 目を向けると、気絶した鳥だった。
 ああちょうど上を飛んでいたのね。お気の毒に。
 鳥が数羽、白目を剥いて落ちてくるのってなかなかにシュールな光景。

「ねーねー、鳥が落ちてきた!」

 フェイルが喜色満面でこちらに向かって走ってきた。
 手に持っているのは、おなじみマンドラゴラ。そりゃあ鳥だって気絶するわ、あんな声聞かされたら。つーか、鳥たち息しているよね?

「フェイル! ファーナ! 遊び半分であんなもの抜いたら駄目でしょうが!」
 わたしは大きな声を出した。

「えぇぇ~。なんでぇ?」
「なんでぇ? じゃなくって。マンドラゴラだっていい迷惑でしょうが」
「リジーだってこの間抜いていたよ?」
「う……」

 フェイルの指摘にわたしは言葉を詰まらせる。

 いや、ほら。あれは……生活費の足しにするために近々人里に降りて売ろうと思っていたわけで。

「わ、わたしは鳥の迷惑にはならないよう細心の注意を払ってね……」

 我ながらこの言い訳はきっつー。
 案の定、双子はそろってわたしにいまいち納得できないという目を向けてくる。

「それに、わたしはもっと声の小さいマンドラゴラを抜いていたでしょう。フェイルが抜いたのって森の精霊が教えてくれた一番うるさいやつじゃない」

 抜かれたマンドラゴラは干からびたミイラのような形相でだらんとぶら下がっている。
 つか、抜かれたマンドラゴラまだなにかぶつぶつと言っているよね? え、なんか怖いんですけど。

「と、とりあえずそれ、どこかに置いてきなさい」
「えぇぇ~。干して売りに行かないの?」
「え……遠慮しておくわ」

 わたしが答えるとフェイルの手の辺りから「ちっ」という舌打ちが聞こえてきた。
 わたしがそちらを視線をやると、フェイルに掴まれているマンドラゴラがふいっと顔をそらしたように……見えた。

 えっと、気のせいだと誰か言って。つーか、そんな子連れて帰って干したくない。

「ちなみに鳥はね、今日のリジーの晩御飯になるかなって」

 えへんと胸を張るフェイル。
 わたしはちらっと白目向いてる鳥を見下ろした。

「ならないわよ!」
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