悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「ええ~」
 二人が揃って不服そうに声を出した。

「レイルは、人間は生活のために狩りをするって言っていたよ?」
「いや、まあ。そうだけどね」

 しかし、マンドラゴラの声を聞いて落ちてきた鳥は嫌だ。わたしの心情的に。
 レイルも余計なことを言いよって。

 わたしが天を仰ぐと、ティティがふよふよと飛んできた。

「リジー様ぁ。沢のほうでメローナがいい感じに冷えてますよぉ」

 そういえばさっき頂き物のメローナ(見た目も味も前世でおなじみメロン)を沢で冷やしていたんだっけ。

 わたしのすぐ近くまで飛んできたティティはわたしにこそっと耳打ちをする。「さっさとここから退散しないと、さっきフェイル様がマンドラゴラ引き抜いたせいで、大杉の爺様が昼寝起こされてぷんすかしていましたから」と。

 わたしは顔を青くした。

「とにかく、冷たいメローナ食べましょう」
 ティティはわたしの背中をぐいぐい押しやる。

「わぁい。メローナ食べるー」
「僕が割ってあげるね」

「って、こら! 大杉のおじいさまにちゃんと謝りなさいっ! あと、そのマンドラゴラは置いていきなさい」

「ええ~。せっかくリジーのために抜いたのに」
「その気持ちだけ受け取っておくから」

 そう言うと再びフェイルの手元から「ちっ」と舌打ちが聞こえてきたけど、今度は聞こえなかった振りをした。

「じゃあ鳥は?」
「それも……置いていきなさい」

「ええ~。せっかくだから一匹持って帰りましょうよぉ。わたし、おいしくこんがりいい感じに焼いちゃいますよ。グレゴルン著、人間の料理・野外編に載っていた香草丸焼き、興味ありますぅ」

 グレゴルン著の書籍ネタもちょっと、いらない。
 フェイルは掴んでいたマンドラゴラを眺めて、それからわたしを伺って、とたたっと少し離れてマンドラゴラを地面に置いた。

 それを見届けたわたしはほっと息をついたのだが、ティティがちゃっかり鳥を一話背負っているのを知っている。

 きっとわたしの晩御飯に……なるんだろうなあ。
 後ろでは「ぐぇぇ」と聞こえあとにばさばさと羽音が。ティティが「あらぁ。気が付いたみたい。でもまだ寝ていてね」と物騒なことを言った直後再び静かになった。

「ティティ、強い」
 フェイルの感嘆する声が聞こえてきたけど、変なところは真似しないでほしい。

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