悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 前世で甥と姪を相手にしていたからか、フェイルとファーナの扱いも初期のころからかなり砕けていたと思う。

「ま、リジー自身がいい子だから双子が懐くっていうのもあると思うけど」
 なんて、さらりと言うからわたしは次の言葉に詰まってしまう。

「いい子って……」

 何も言わないのはあれかなと思い、わたしはようやくそれだけを口にする。
 だって。悪役令嬢として転生したわたしの評価って基本、高飛車・意地悪だったし。
 人間の男性に真っ向から褒められな慣れていないのに。

「あ。耳まで赤くなってる」
「ちょっと。からかったわね」
「本当のことだって。面倒見もよくって、料理も得意で。お菓子作っているリジーって楽しそうでいいなって思う」

「もう。そういうこと、面と向かって言う人って信用できないのよ」

 再び褒められたわたしはつい可愛くないことを言ってしまう。
 こんな風にまっすぐに褒め言葉を言われるなんて、まったく予想していなかったのに。

「どうして?」
「だって、わたしをいい子とか。そんなこと今まで言われたことないもの」
「それはいままでリジーと関わりのあったやつらが単に見る目が無かっただけだろう」

 レイルはあっさりと言い放つ。いっそ清々しいくらい。

「だってほら。わたし勝気そうな顔をしているでしょう。目もつり気味だし、背だって女性にしては高い方だし、よくお高くとまっているとか、冷たそうとか言われてきたし」
「俺の方が背は高いし、リジーは美人だけれど冷たいというかどちらかというと若干所帯じみているというか、たまに乳母みたいだとは思う」

「それって十七の娘に向かって言う言葉なの?」

 レイルの評価が微妙すぎてわたしは眉を顰めてしまう。さっきまで顔が真っ赤だったはずなのに急速にしぼんでいく。

「ああそういえばリジーって十七だっけ。てっきり……」
「なによ?」
「いや、なにも」

 声を低くしたわたしにレイルがどうどう、とわたしを宥める仕草をする。馬か犬か、わたしは。失礼な。

「そんな風にころころ表情かえるところも楽しくて俺は好きだよ」

 にっこり笑って自然体でそんなことを言うものだからわたしは固まってしまう。

 それなのにレイルは「いやあ、本当に今日はいい天気だよな。俺、ここんとこずっと室内に籠りっぱなしだったから、今日来れてめちゃくちゃ楽しい」などと言っている。
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