悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 フリュゲン、フリュゲン……覚えておかないと。わたしは頭の中で何度か今聞いた名前を繰り返す。

 ザーシャはわたしを家に招いてくれて、彼女の淹れてくれたハーブ茶をいただいた。
 お茶をいただいている間、ザーシャはいくつかの品物をわたしに見せてくれて、わたしは虫よけ剤と軟膏を買って村を後にした。

◇◆◇

 人里での交流はなかなかに楽しかった。
 と思うのは今現在、わたしが日常的に接しているのが黄金竜と精霊、たまにお育ちの良いレイルというごく限られた者たちだから。

「わたしも人間の集落に行きたかったな……」
「ティティだけ一緒なんてずるい」

 と、文句を垂れるのはおなじみフェイルとファーナ。
 昨日からずぅっと同じことを繰り返している。わたしの真似をしたがるお年頃。そうでなくても好奇心の強い二人は、置いて行かれたことが悔しくて仕方ないらしい。

「ほら、文句言わないの」

 わたしはご機嫌とりも兼ねて作ったばかりのプリンを目の前に置いた。
 ティティがどこからか用意してくれるのでお菓子作りの道具だけは充実している。
 双子はプリンをすくって、口に入れて再びため息。

「はぁぁぁ……」

 うわ。思ったより重症だわ……。

 プリンづくりは結構試行錯誤をしていて、今日は温度加減が上手くいったのかいい感じの硬さに仕上がったんだけどな。
 わたしは自分用のプリンをすくって一口食べた。うん、我ながらうまくいったわ。

「もう、せっかくのおやつの時間なんだから」
「僕も人間たちと一緒に遊びたかった」
「フェイルの遊びを普通の人間相手にやったら大けがじゃすまないから本当に止めなさいね?」

 かといって私だから平気というわけではないけれど。

「リジーはわたしたちのこと置いていっちゃうんだ……」
 うじっとした声を出すのはファーナ。
「うっ……」

 可愛らしく瞳をうるうるされると結構、いやかなり弱い。
 この子、この年にいて自分の武器を最大限にわかっているわね……。末恐ろしい。

「わたし、リジーみたいにご挨拶できるようになりたくって練習しているのに」
「うっ……」

 そこでいい子アピール加えるか。
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