悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 ファーナってば、この間わたしがルーンにしてみせた淑女のお辞儀を自分もやりたいと言い出して、わたしに教えを請うてきたのよね。最近ファーナはほんの少しだけ女の子に目覚めたらしい。ほんの少し、と付け加えるのはフェイルと一緒になって森でやんちゃ遊びもたっぷりしているから。

「ほら、プリン食べておきなさい」

 リジーは素直にプリンを食べ始める。
 もぐもぐとプリンを食べ始めた双子たち。わたしも一息ついておやつの時間を再開。

 でもまあ、ずぅっとレイアたちのお世話になるっていうことはありえないことなのよね。さすがに黄金竜にずっと庇護してもらうわけにはいかないし。
 一人で生きていく準備だけはしておきたいし。

「今日のおやつはプリンなんだね」
「あ、お父様」

 食堂に現れたのは双子の父親、ミゼル。人の姿になったミゼルは相変わらず麗しい造作をしている。

 ミゼルはフェイルとファーナの頭を順番に撫でてから私の方を見て「そういえば人間の村に薬草を売りに行ったんだって? 言ってくれれば魔水晶分けてあげたのに」と話しかけてきた。

 魔水晶とは魔法の力を結晶化させたようなもの。魔法使いが使えば自分の魔法力を補うこともできる便利アイテム。

「え、そんな。大丈夫です。いりません」
 わたしは慌てて手を振る。
「僕たちが昔食べていたやつをあげたらリジーが喜ぶの?」
「魔水晶は人間たちにとっても貴重なものだからね」

 ミゼルは子供たちに説明をする。竜の子供が自身の魔力を補うために魔水晶を食べるように、人間の魔法使いも便利に使うことがあると。

「大体、いきなり現れたわたしが魔水晶を売りに行ったらどんな噂をされるか。一応、魔法関係からは距離を置いて暮らしていくつもりなので、魔法使いと積極的に関わり合いになるつもりはないんです」

 魔水晶は取れる土地が限られるし、そもそも人間がおいそれと近寄れる場所に生まれるものではない。よってその価値は上がって高値で取引をされている。
 そんなものを売りに来た女がいたとなれば、どういった背景を持った人間か色々と探られることになる。

 それでわたしがリーゼロッテ・ディーナ・ファン・ベルヘウムだと突き止められればまずい。色々と。

「そうなのかい……」
 なぜだかミゼルが肩を落とした。
「たまにはすごーい、ミゼル頼りになるって言われたかった……」
 どこの大きな子供か。
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