悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 双子が竜の姿で川で大騒ぎをして釣りどころじゃなくなったのもまあいい思い出。

「こんなに採ってどうするんだ?」
 とはレイル。今日はみんなで森で果物狩り。

「干して保存食にしたり、パウンドケーキにいれてみたり。あとはジャム作ったり。コンポートもおいしいなぁ」

 四人だとすぐに籠が一杯になる。たまに木の精霊が果物をばさばさっと落としてくれたりもする。

「なるほど。リジーの手作りお菓子は俺も好きだ」
「わたしもー」
「僕もー」

 レイルの後に双子の声が続いた。

「褒めたって何にも出ないんだから」
「あ、照れてる」

 レイルの指摘にわたしは肩をぴくりとさせる。
 竜や精霊から褒められるのと、レイルから率直に言われるのとではちょっとだけ気持ちが違う。男性に褒められることってこれまでの人生であんまりなかったから、どうしていいのか分からなくなる。

「今日は結構採れたから……干してフリュゲン村に持って行こうかしら」

 こういう森で採れた果物って売れるのかしら。物々交換より、現金に替えてもらったほうがわたしとしては嬉しいんだけどな。
 完全おひとり様スローライフIN森の中だったら、物々交換もありがたいんだろうけど。

「フリュゲン村?」
「むぅ……」
「リジーまた一人で人里に行くつもりだぁ」
 腰のあたりから不服気な声が聞こえてくる。

「リジー、このあたりの人里に降りているのか?」
 双子たちの言葉から色々と察したのかレイルが質問してきた。

「え、まあね。今後のことも考えて、採取した薬草を売りに行ったのよ、この間」
「僕たちを置いてね」
「わたしたちを置いてね」
 あ、まだ根に持ってる。双子の声が恨みがましいものになる。

「それで不貞腐れているのか」
 ぽんっとレイルがフェイルの頭の上に手のひらを載せる。

「にしても、独り立ちってまた急だな」
「べつに今すぐにってわけでもないわよ」
「じゃあ具体的にいつ頃?」
「え、それは……」

 わたしは言葉を濁した。この話題、双子の前ではかなりセンシティブ。

「この冬はここにいるつもり」
「じゃあまだ先なんだな」
 なぜだかレイルまでがホッとした声を出す。

「でもリジー一人で村に行って大丈夫なのか?」
「ティティも一緒よ」
「世間知らずな精霊は数に入らない」
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