悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 と、レイルはティティが聞いたら炎を振りまきそうなセリフを吐いた。よかったティティはお留守番で。

「あなた、ティティが聞いていたら怒るようなことを平然と……」
「ここに彼女はいないからな」

 レイルは開き直った。
 それから少し黙り込んでから「よし。俺もそのフリュゲン村に行く」などと言い出した。

 なぜにそうなる?
 わたしが目を見開くと「ずるいっ! 僕も」「わたしも」と合唱が始まった。

「ずるくないだろ。俺は双子たちとはちがって大人だしれっきとした人間だ」
 胸を張る台詞でもないなあ。大人の典型的なずるい台詞だよ。まったく。

「ずーるーいー」
「大人ってずーるーいー」
 ほら始まった。

 ずるーいと駄々をこね始めた双子をどうしろと。わたしはキッとレイルを睨みつける。
 レイルはなぜだか「なんか、こういうのって将来の予行演習みたいだよな」とか言い始めた。そういう予行演習はわたしじゃないところでやってほしい。

「あーもぅっ。ドルムント、なんとかしてー」
 目の前の男は頼りにならないのでわたしはドルムントを頼ることにした。

「フェイル様もファーナ様も駄々をこねないでください。リジー様が困っていますよぉ」

 どこからともなく現れたドルムントは困った声を出して双子を宥めるが、効果は無い。
 ドルムントはフェイルとファーナを交互に慰める。

「ドルムントには関係ないもん」
「僕たちいい子にしているのに。大人は卑怯だ。ずるいんだ」
「わたしだっていい子にしているもん」

 あ、これはまずいかも。
 わたしは天を仰いで、それから決意を固めた。

「とにかく、わたし一人の判断じゃ駄目だから。いいこと? はじめてのおつかいっていうのはね、お父さんとお母さんの了承をちゃんと得るものよ」
 わたしは息を吸ってはっきりきっぱり言い放った。

「でもお父様は……」

 目をうるうるさせたファーナ。言いたいことは分かる。ミゼルは判断をわたしに丸投げしたってね。

「はいはい。でもね、あなたたちの保護者はレイアとミゼルなんだから。まずは二人の許可をもらうこと。ここで駄々をこねていても無駄よ。とりあえず戻りましょう」
「はぁい」

 二人は今度は素直に頷いた。
 それからわたしたちは住まいに戻ってレイアたちを探した。
 レイアとミゼルは日中住まいを開けていることがある。
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