悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 ティティ曰く「ちょっとお出かけですぅ」とのことだった。

 待っている間わたしは採ってきた桃に似た果物を使ってタルトを作った。生地は昨日準備していたから簡単だった。カスタードクリームをつくって、レイルが魔法で冷やすのを手伝ってくれたから。

「こういうとき魔法使いが一人いると便利よね」とわたしが言うと「そうか」とまんざらでもなさそうに頬を緩めた。小娘にいいように使われているのに、それでいいんだろうか。ってわたしが言えたことでもないけれど。

 タルトを食べ終わってもレイアたちは戻ってこなかった。
 結局レイルが帰る時間となり、彼は帰り際「次フリュゲン村に行くのは俺と一緒の時だからな。それまでリジーが一人で行くのは駄目」と訳の分からないことを言ってきた。

「何言っているのよ。あなたいつくるか分からないじゃない」
 わたしの反論に「いやたしかにそうだけど……」とレイルは口ごもる。

「まあまあ。リジー様、ここはとりあえず頷いてあげるのもやさしさの内です」
「うーん?」
 ドルムントの助言は分かるような分からないような。

「とにかく。そういうことだから」

 レイルはもう一度念を押して帰っていった。
 うーん……あのお年頃の男ってわからない。

◇◆◇

 レイルが次に谷間の黄金竜夫妻の元を訪れたのはそれから三日後のことだった。

「案外早かったわね」
「仕事頑張ったからな」
 レイルは胸を張った。

「ああそうなの」
「うわ。反応薄い」

 これ以上どう反応しろってか。
 わたしのうすーい反応がお気に召さないらしいけど、相手するのも面倒なのでわたしはそのままスルー。

 今日はどこにも出かけていないミゼル夫妻にフェイルとファーナは自分たちも人里に行きたいとお願いをした。

「そうねえ……」

 レイアは思案気に虚空を見つめる。
 やっぱり竜の子供はか弱いからあまり遠くには行かせたくないのだろうか。

「はしゃいで口から火を吐いたら駄目よ。ちゃんと分かっているの?」
「はあい」
「それからリジーとレイル以外の人間の前で魔法を使っても駄目。約束できるかしら」
「大丈夫!」

 元気だけはいいんだけどなあ。
 ちらっとレイアの顔を確認すると、その顔には「心配」と書いてある。わかる、ものすごくよくわかる。

「まあ、いいんじゃないか。最近の二人、いい子にしていたし」
 助け舟を出したのはミゼルの方。
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