悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 なぜだか二人とも楽しそう。

「あなたたちもこれを羽織りなさい」
 レイアが双子に外套を被せる。ケープのようになっていて、前をりぼんで結んであげている。
「人間の社会を学ぶよい経験だからね。いいかい。リジーとレイルの言うことをよく聞くんだよ」
「珍しいからといって、なんでもすぐに触っては駄目よ」
「どうしてぇ?」
 両親からの忠告にフェイルが質問をする。

「人間の社会には人間の作った決まりごとがあるからね。なにかに触りたくなったら、ちゃんと側にいる人間に許可をもらいなさい」
「わかった」
「はあい」

 二人はそれぞれ頷いた。
 行きはミゼルとレイアが一緒になって移動魔法を使ってくれることになった。子供たちもいるから当然といえば当然で。

 竜の作る魔法陣の中に入ったわたし達を光が覆う。一瞬眩しいと思ったらふわっとした浮遊感を感じて、次に目を開けるとそこは森の中。

「もう着いたの?」
「ここが人間のたくさんいるところ?」

 フェイルとファーナが辺りを見渡す。
 わたしは生れて初めての移動魔法に若干目を回す。なんとなく体がふわっとする。

「大丈夫か? 最初は慣れないからな」

 くらっと足がもつれたところをレイルが背中に手を回して支えてくれた。
 ちょっと、近いかも。って一番最初に出会ったときもこんな感じだったっけ。
 でもなんとなく、あのときと今とだと、何かが違う気がする。それが何なのか分からないけれど。心の奥がむずむずする。

「リジー様ぁ、大丈夫ですかぁ?」
「え、うん。平気。初めてだからちょっと体がびっくりしたのかも」

 すぐそばにティティも来てくれて、彼女はさりげなくレイルの腕を私の背中から取り払う。そのあと、彼女はわたしの両肩を後ろから支えてくれた。

「わたしは今回姿を消していますけれど、すぐそばにいますからね。あ、そうだ。これ、差し上げますぅ」

 そう言ってティティは髪の毛にぶら下げていた鎖を一つ取り外してわたしの首にかけてくれた。細かな鎖は赤金色に輝いていて、ところどころ赤い石が垂れ下がっている。

「これって……」
「わたしの炎を閉じ込めた石ですぅ。これがあればどんな悪漢も一発で黒焦げにできますからぁ」
 ティティは視線をレイルに合わせた。

「怖っ。そんな物騒なものいらないわよ」
「ええええぇぇ~。ティティはリジー様が心配なんですよぉぉ」
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