悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 そのあとも双子はわたしたちに目に入ったものについてあれやこれと質問をしていった。物の名前とか、何をしているのとか色々。

「あら、見ない顔が大勢と思ったら……この間のリジーじゃないか」

 歩いている最中に出会ったのは前回お世話になったザーシャ。彼女はわたしの顔を覗き込む。ちなみにフードを被っているのはわたしだけ。他のみんなは早々に外していた。

 ザーシャは果物の入った籠を腕に抱えている。

「こんにちは、ザーシャ」
「あれ、今日はこの間の立派な赤毛のお嬢さんと一緒じゃないの?」
「ええ、まあ。彼女はたまたま近くで知り合った人で、今日は別の人と来ました」

 ザーシャはふうんと頷いてからレイルを上から下まで眺める。

「いい男だねあんた。リジーのこれかい?」
 と言ってザーシャは指を立てる。
「え、ええ?」

 ここ、深窓の令嬢で育ったわたしはどんな反応を返すところかな。前世でのわたしは「もう何言っているんですか(セクハラですよ課長)」って適当に流すところだけれど。

「これじゃなくってれっきとした夫だ。ちなみにこっちは娘と息子だ」

 ええ~! ちょっとなに爆弾発言かましちゃってんの、レイル!
 わたしは目を剥いた。

「おや、所帯持ちだったの! リジー水臭いよ」

 とたんにザーシャが目の色を変えた。
 訳あり女一人隠居住まいが一転、一家で森の中スローライフになったらしい。

「へっ……、ちが―」
「そうなんだ。色々とあって、森の奥に居を構えているんだ」
「そうなのかい」

 ちょっと、なんでレイルがしれっと後を続けるのよ。
 え、なにそれ。そういう話聞いていないんですけど?

「子供たち双子かい?」
「そうだ。ほら、ご挨拶してごらん」

「こんにちは」
「……こんにちは」

 人見知りを発揮したのはファーナの方で、彼女はわたしの後ろに隠れて、ほんの少しだけ顔をのぞかせた。

「あら、可愛いねえ」
 ザーシャはしゃがんで子供の目線に合わせる。

「お名前は?」
「フェイル。こっちはファーナって言うんだ」

 フェイルの説明にファーナはちょこんと頭を下げる。それからわたしを見上げたから、わたしは「練習したご挨拶、してみたら」と聞いてみた。

 ファーナはしばらく固まって、わたしから手を離した。
 外套の裾をちょんとつまんで足を引いて「はじめまして、ファーナっていいます」とご挨拶。
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