最悪な恋の落ち方
「一、ニ、三、四、五、六……」

深く、それでいて早い動作が繰り返される。必死に目の前の命を助けようとするその姿に、草介の胸がギュッと音を立てた。

「AED、持ってきました!!」

草介はそう言い、AEDの電源ボタンを押す。AEDは素人が使うことのできる医療器具だ。機械が全てを判断してくれるので、機械に従っていればいい。

「パッドを胸に当てて、機械が判断したらショックボタンを押してほしい」

心肺蘇生を続けながら明日菜が言う。草介は「はい」と頷き、女性の胸に電流を流すためのパッドを装着した。



それから、交通事故の現場には多くの警察と救急隊の姿であふれ、辺りはさらに騒がしくなった。

明日菜が心配蘇生をした女性の心拍は、草介が持ってきたAEDのおかげで再開し、女性は担架に乗せられて救急車に乗せられ、病院に搬送されていくところだ。女性だけでなく、多くの怪我人が運ばれている。

その様子を見ていた草介は、明日菜に肩を優しく叩かれた。草介が振り向くと、明日菜にペットボトルの水が差し出される。
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