君と私で、恋になるまで


◻︎


「…もう、3年以上経つんだな。」


ちょうどお客さんが切れたタイミングで、ブースから少しだけ離れてそう言う一樹と向かい合う。


もうそんなに時間が経ったんだ、と純粋な驚きと共にその年月を確かめるように頷いた。

大学の頃から付き合っていた一樹と別れたのは、入社してすぐの研修中だった。

会社の保養施設にいる時に、電話がかかってきて。

別れを切り出したのは、目の前の彼の方だった。


「……あれから、元気だった?」


瞳を細くして優しく尋ねられて、私も口角を上げる。


「毎日、仕事覚えるのに必死だったよ。」

「だろうな、目に浮かぶ。ちひろは走り出したら止まらないからな。」

「そう?」

「うん、ずっとそうだった。」

昔を懐かしんではにかむ、その笑顔がとても好きだったなと記憶を辿る。



「…この間、飲み会行ったんだって?」

「あ、うん。楽しかったよ。」

「…ずっと来てなかっただろ。」


大学時代のみんなで定期的に開かれるそれに、就職してから参加したことがなかった。

仕事が忙しくてタイミングが合わなかったのと、もう1つ。


「___俺のせいだよなって、ちょっと思ってた。」


言い当てられて、私は眉を下げて下手な笑みを浮かべた。


「……私、申し訳なかったんだよずっと。」

「ん?」

「あの時、もう完全にお互いの気持ちが離れてるのに気付いてた。なのに私、そこから逃げて"これから"に目を背けてた。

…自分から動くの、怖がってたんだと思う。」



大学生活を一緒に過ごした、大事な人だった。

だけど彼との恋以上に、目まぐるしく過ぎる日々の方へ、確実に気持ちが向いていく自分が居た。


それを、認めたく無かった。

一樹が告げた別れの言葉は、悲しくて寂しくて。

だけどそれ以上に、過去に縋って伝える勇気を出せなかったことに、罪悪感があった。

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