君と私で、恋になるまで
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「…もう、3年以上経つんだな。」
ちょうどお客さんが切れたタイミングで、ブースから少しだけ離れてそう言う一樹と向かい合う。
もうそんなに時間が経ったんだ、と純粋な驚きと共にその年月を確かめるように頷いた。
大学の頃から付き合っていた一樹と別れたのは、入社してすぐの研修中だった。
会社の保養施設にいる時に、電話がかかってきて。
別れを切り出したのは、目の前の彼の方だった。
「……あれから、元気だった?」
瞳を細くして優しく尋ねられて、私も口角を上げる。
「毎日、仕事覚えるのに必死だったよ。」
「だろうな、目に浮かぶ。ちひろは走り出したら止まらないからな。」
「そう?」
「うん、ずっとそうだった。」
昔を懐かしんではにかむ、その笑顔がとても好きだったなと記憶を辿る。
「…この間、飲み会行ったんだって?」
「あ、うん。楽しかったよ。」
「…ずっと来てなかっただろ。」
大学時代のみんなで定期的に開かれるそれに、就職してから参加したことがなかった。
仕事が忙しくてタイミングが合わなかったのと、もう1つ。
「___俺のせいだよなって、ちょっと思ってた。」
言い当てられて、私は眉を下げて下手な笑みを浮かべた。
「……私、申し訳なかったんだよずっと。」
「ん?」
「あの時、もう完全にお互いの気持ちが離れてるのに気付いてた。なのに私、そこから逃げて"これから"に目を背けてた。
…自分から動くの、怖がってたんだと思う。」
大学生活を一緒に過ごした、大事な人だった。
だけど彼との恋以上に、目まぐるしく過ぎる日々の方へ、確実に気持ちが向いていく自分が居た。
それを、認めたく無かった。
一樹が告げた別れの言葉は、悲しくて寂しくて。
だけどそれ以上に、過去に縋って伝える勇気を出せなかったことに、罪悪感があった。