君と私で、恋になるまで
「うーわ、蚊に刺されたわ。まだ5月なのにやばくない。
お前、泣く場所もうちょっと選べや。」
「…ねえ、本当に瀬尾は何しに来たの。
あともれなく私も無事に刺されてんのよ。痒い。」
くだらない会話を時折振ってきて、それに思わず笑って。
だけどまた涙が出てきたら、暫く黙ってただ隣にいてくれて。
それを随分繰り返してくれる瀬尾の隣で、いつの間にか涙は止まっていた。
お互い自室に戻る時、泣きはらした顔でお礼を言うと、瀬尾は見たことがないくらい優しい顔で微笑んで、「今度奢れよ。」と言った。
星が降る静かな夜。
1つの恋が終わったその瞬間、私はいつも気怠げな男の心地よい優しさに触れてしまった。