君と私で、恋になるまで


◻︎


"気になるのある?"

「…あ!最近予告でよくやってる真飛 葉子監督のやつは!?」

"あれは来週から公開。"

「そ、そっか…惜しかった。」


"良いよそんなの気にしなくて。

ちひろが観たいのは?"



「うーん…」

本当に唸って、渋い声を出す私に、クスクスと心地良い笑い声が受話器越しに響く。


まだまだ"ちひろ"って呼ばれるのには慣れていない。恥ずかしいし嬉しいし、私の心臓は本当に日々大変だ。


"あー、ほらあれは?

國立 志麻が主役のやつ。"


「"風の中のわたし"……!?」


"反応、早。 

観たいやつあるなら、ちゃんと言ってくれますか?"


「……」


私が昔から好きな女優、志麻ちゃんの映画が公開されてるのは知っていたけど。

態々それに付き合わせるのもなあと思っていたのに、この男にはバレていたらしい。


「…良いの?」

"というか、もうそれでチケット取ったから。
13:20の回な。"


「……仕事早いね?」

"ほんと、俺もそう思う。"


そして今日も、謙遜はどうやらしない日らしい。




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