君と私で、恋になるまで
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"気になるのある?"
「…あ!最近予告でよくやってる真飛 葉子監督のやつは!?」
"あれは来週から公開。"
「そ、そっか…惜しかった。」
"良いよそんなの気にしなくて。
ちひろが観たいのは?"
「うーん…」
本当に唸って、渋い声を出す私に、クスクスと心地良い笑い声が受話器越しに響く。
まだまだ"ちひろ"って呼ばれるのには慣れていない。恥ずかしいし嬉しいし、私の心臓は本当に日々大変だ。
"あー、ほらあれは?
國立 志麻が主役のやつ。"
「"風の中のわたし"……!?」
"反応、早。
観たいやつあるなら、ちゃんと言ってくれますか?"
「……」
私が昔から好きな女優、志麻ちゃんの映画が公開されてるのは知っていたけど。
態々それに付き合わせるのもなあと思っていたのに、この男にはバレていたらしい。
「…良いの?」
"というか、もうそれでチケット取ったから。
13:20の回な。"
「……仕事早いね?」
"ほんと、俺もそう思う。"
そして今日も、謙遜はどうやらしない日らしい。