君と私で、恋になるまで
急なその提案に驚いて、いや私はお邪魔なのではと思いながら返答に迷っている中で、思い出してしまった。
"央と飲みに行く時、枡川さんを彼女で紹介されたら俺多分、泣いちゃうなあ。"
そうだ。
私は、あのいつも優しすぎる神様のような彼に、沢山背中を押していただいていた。
香月さんの会社のプロジェクトは、いよいよ着工して少しずつリニューアルの工事が進んでいる。
アポイントで伺う時は、メンバー総出だし、大詰めということもあってわざわざ瀬尾とのことを香月さんに伝えるタイミングも失っていた。
きちんと、感謝をお伝えしなければ。
そう思い、姿勢を正した私は、
《謹んでお引き受け致します。》
《急に硬くない?》
そう、チャットで返事を送った。
◻︎
そうして、瀬尾が予約してくれた香月さんのオフィスとの中間地点に位置する居酒屋さんの前で合流した時。
「……やばい、本当に泣いちゃうなあ。」
彼は私と瀬尾を交互に見て、優しく微笑みながらそう言ってくれた。
「…香月さん、ありがとうございます。」
私も感涙と共にそう告げれば、
「腹減りました、はやく中入ろ。」
「………」
瀬尾はそうロートーンボイスで告げて暖簾をもうくぐろうとしていた。
この男、余韻とか、そういうものがないのか。
気怠い男の背中を睨んでいると、香月さんはクスクスとやけに楽しそうに笑う。
「…あれは照れてるな。今日、面白いなー。」
香月さんは、ちょっと悪戯っ子のような瞳でそう言って私を見て、瀬尾の後に続くように入って行った。