君と私で、恋になるまで
「……今度の自由研究はあの2人にするわ。」
私の隣を歩いていた亜子は、やけに楽しそうにそう宣言する。
「…研究?」
「"恋になるのかどうか?"」
「え…やっぱりあれは意識し合ってるからなのかな?」
「それ以外にあるわけ?あ〜会社来る楽しみ出来たわ。」
梨木ちゃん、とんでもない教官に目をつけられているよと焦りの表情で再び後ろを見やる。
しかし彼女は、隣のスラリと背の高い彼に苛つきの表情ではあるけど意識が向いてしまっているのは、私でも分かった。
それは有里君も、そうなのだけど。
「…なんか、前途多難な2人だね。」
「あんたは人のこと言えなかったけどね。」
「……」
それはその通りなので、何も言えず口をつぐんで目を細めると亜子は吹き出すように笑う。
「まあでも、天然記念物の"今の悩み"は、私が聞くものじゃ無いと思うから?」
「……え?」
そうして会話の続きのように繋がった言葉は想定外で、立ち止まってしまいそうになる。
「ちゃんとあのドヘタレにまず話して、もしそれでしょーもないことしか言われなかったら、その時は私が聞いてあげる。」
__嗚呼、私はこの子には隠し事がやはり出来ない。
私が抱えていることを見通して、
そんな風に軽く告げてきてくれる。
その瞬間、「何の話!?」と前を歩いていた古淵が近づいてこようとするのに「来るな」と容赦無く牽制する亜子の様子に、笑ってしまった。
「…亜子はやっぱり最高だなあ。」
「知ってるけど?」
いつも結局背中を押してくれる、言葉は鋭いけど優しい教官に微笑む。
《央。今日、家行っても良い?》
その優しさに支えられて生まれた勇気がしぼまないうちにと、ヘタレな自分を鼓舞してあの気怠い男にメッセージを送った。