君と私で、恋になるまで
「…も、もうこんな時間だから…!!」
「明日、別にここから出社すれば良いだろ。」
サラサラとしたトーンでの提案は、やけに熱っぽさを持った瞳のせいで簡単にNOが言えない。
「…やっぱり瀬尾は営業向いてるね。」
「それはどうも。」
良いのかな、絶対に疲れてるこの男に甘えても。
困ったように笑って返答ができずにいると、ふと微笑んだ男はそのまま、そっと私の頬に触れる。
微熱を伴う指先に、ドキドキと心拍数が順調に上がっていく。
「……俺、明日人事面談ある。」
「、」
「…アドバイスくれませんか、枡川さん。」
「アドバイスとか無いです。」
「冷たいな。」
だって。
それは私が、ずっと、聞きたいと思ってた。
「央。」
「ん?」
「…私も、近々人事と面談がある。」
「うん。」
4年目を迎えて、キャリアを改めて考えるタイミングだからと人事から面談の依頼が来たのは確か1ヶ月ほど前。
それは同期みんなに来ていて、そんな年になったんだなあとその時は特に何も思わなかったのだけど。
今週初め、営業部と企画部の部長に呼び出されたのは全く想定していなくて。
"枡川。
今後のキャリアプランとか、どう思ってる?"
"…え?"
"営業じゃなくて企画の仕事、やってみたい気持ちは無いか?"
「…央、アドバイスというか、相談に乗ってほしい。」
至近距離の男に、部長から言われた言葉を思い出しながら弱々しく告げれば、奥二重の瞳は優しく細まって。
「やっと言ってくれたんだけど。」
ずっとなんか悩んでるなと思ってた、困ったような声色でそう言って、そのままキスを落とされる。
「…バレていた…」
「当たり前だろ。」
クスリと笑った男から「ということで今からご飯食べるの付き合って。」とやはり強引に提案されたそれに頷いた。