君と私で、恋になるまで
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「大学の後輩…!?」
「そう、央とはゼミが一緒だったんですよ。」
「だ、だから香月さんはデザイン関係のこともお詳しかったんですね…」
多方面でお世話になってきた香月さんは、私がてんやわんや専門用語に苦戦してる時も本当によく助けて下さった。
オープンスペースに設置された丸テーブルを囲む形で座った私は、隣に平然と座っている瀬尾に厳しい視線を向けるけど、気付かないと言わんばかりに知らんふりをされる。
「全然、知りませんでした…」
「こいつが、黙っといてって言うので。」
「……なんで、ですか?」
「それより先輩、あの話をしてください。」
急に話に入ってきた瀬尾は、ぶっきらぼうに香月さんに別の話を促す。
こちらはクライアント様なんだからな!?という私の視線も再び無視された。こ、この男…、
「枡川さん。昨日のうちの社員の無礼を謝罪させてください。」
隣の奴に睨みをきかせていた私に、香月さんは急に真面目な顔になって頭を下げる。
「…えっ、!?頭をあげてください…!」
「帰り際、様子がおかしいと思ったのに、きちんとお聞きするべきでした。」
「、」
「央が、昨日連絡をくれて。」
「……、そ、そうだったんですか。」
「枡川さん。当然ですが、今回のコンペは正当な選考をした結果です。上役も何人も入って、判断しています。
それに例えば俺と枡川さんがそういう関係だったとして、俺1人の意見で物事が進むほど、俺はまだそんなに力無いですから。」
「っ、」
その若さでもう課長の香月さんの最後の言葉はあまり説得力も無いけれど。
「こ、こちらこそ、注意力が足らず申し訳ありません。香月さんに、噂でご迷惑などはかからなかったでしょうか。」
「大丈夫。この人、社内に溺愛してる奥さんいるから。」
「…!?!?」
「指輪は家でしかしないもので…」
と照れる香月さんがなんだか可愛い。
「そしてそれはこの会社では周知の事実らしいから。
昨日の社員の話はデタラメだよ。
枡川が来たところで誰も疑ったりしないし、お前が怯える必要なんか無い。」
瀬尾はふ、と目元を優しく緩めてそう笑う。
さっきまで無視だったくせに急になんなの。
そう言ってやりたいのに、こみ上げてくる気持ちが私の言葉を邪魔する。
さっきエントランスで、私が怖がっていたこと。
それさえも分かったかのように言ってくれる奴が悔しくて、だけど、すごく嬉しかった。