君と私で、恋になるまで
「わ、」
前を歩く瀬尾に気づかれないように口を尖らせていた私は、ピタリ、急に立ち止まる奴に驚いて声を出す。
「…星ならさ、俺の実家の方が綺麗に見えると思うけど。」
「……え、」
振り返りはせず、だけどはっきりそう言った瀬尾に私は驚いて目を見開く。
そして、お互い数秒の沈黙の後、
「……まあ、だから何って話でも無いけど。」
そう呟いて、また歩き始めてしまった。
「…な、なんなの。」
「なんでも無い。」
き、急に実家とか言うからびっくりした…
もう本当に、この男には振り回されっぱなしだ。
別に誘われているわけでもなかったのに無駄にドキドキし始めてしまったこの鼓動をどうしてくれるんだ。
「もう早く行こ。」
疲れた私は瀬尾を追い抜いて、いつもの居酒屋へと足を進めようとする。
___すると。
「そんな焦んなくてもいいだろ、
もうこれからは、"23時"は守んないよ?」
「っ、」
私の腕を掴んで、悪戯に笑う男に更に鼓動が早くなってしまった。
"ふ、2人で飲みに行っても健全に23時に解散する同期の瀬尾君に言うことはありません…っ!!"
「べ、別に望むところだけど!!」
自分の失言を思い出して、何故か喧嘩腰にそういった私を見て、やはりゆるりと笑うこいつの本心はさっぱり分からない。
だけど胸の高鳴りが止まらない自分が嫌じゃ無いから困るって、悔しいから絶対に瀬尾には言ってやらない。