君と私で、恋になるまで



「そうですね、枡川さんは分かりやすい方ですよね。そこが信頼できる、とても素敵な部分でもありますよ。」
と変わらない笑みのまま、告げられる。


私は急に恥ずかしくなって両肩が上がった状態のまま、「さ、誘えません…」と小さく、やっと返答した。



「どうしてですか?確か、央もその監督の作品好きだって言ってたと思いますよ。」


「そうなんですか…!」

それは知らなかった。でも、それとこれとは別だ。


「…私は、休日に瀬尾を誘えるような立場では、無いので。」




平日の夜に飲みに行く“ただの同期“の私が、急に休日の映画に誘う?
そんなチャレンジャー精神は私には備わっていない。


無理だ、ハードルが高すぎると1人で思考を完結させた私に香月さんは少し憂いを帯びた顔で「残念だな…」と呟く。



「是非、枡川さんと央で行ってもらえれば、僕も2人から直接感想が聞けますし、より具体的にクライアントの方にも色々伝えられると思ったんですけどね…」

「わ、私が2人分リポートさせていただきますよ…?」

「……残念だなあ。」

「…香月さん、ちょっと面白がってますよね?」


香月さんの畳み掛けるような言葉に何故か罪悪感が募るが、なんだかうまく乗せられているような気もして、私はそう尋ねる。




綺麗な瞳を細め、

「面白がっているなんて心外ですよ。応援してます、とっても。」

やっぱり爽やかに笑う彼の表情に私は首を垂れた。

こんなにお世話になってる香月さんに言われてしまったら何も、反論ができない。


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