君と私で、恋になるまで
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ガヤガヤと賑わう店内。
馴染みのお店のいつもの席のはずなのに、私は冷や汗が止まらない。
「枡川、お前どうしたの。」
「な、何が!」
「あんまり箸進んで無いけど。体調でも悪いの。」
「いえ?元気有り余ってますが!?」
明らかに私の挙動は不審なのにも関わらず、瀬尾は「まあ変なのはいつもだしな」と1人で納得しているようだった。
お前、私に余裕があったら殴ってる。
「…あ、この新メニューのじゃがいものやつ美味いよ。」
食ってみ、そう言って小さな発見を私に驚きと共に伝えてくる瀬尾はなんだか少し可愛い。
暫くそんな奴を見ていたくなった自分に気づいて、ばか!!と喝を入れた。
私は、右手で握っていただけのお箸を静かに置く。
「瀬尾、そんな場合じゃ無いの。」
「ん?何。」
「あ、あのね、神様からのお告げがあったんだけどね…?」
「え、なんの宗教?」
香月さんという神様のだよ、と言いたい気持ちをぐ、と堪えて私はひとつ深めの深呼吸。
そしてバッグの外ポケットに入れていたチケットファイルを手にとって、おずおずと瀬尾の前に置いた。
「こ、今週の土曜、其方は暇でしょうか。」
もうこれは口から心臓出てるんじゃ無いかとさえ思えるくらいの鼓動が全身で響く。
よくわからん武士言葉まで出たしなんなの、と自分に突っ込みたくなったがとりあえず目の前の男を見る勇気は無いので、テーブルに並んだおつまみへ視線を落とす。