君と私で、恋になるまで
再びチン、という音がしてフロアの到着が知らされる。ボタンを押し続けていると亜子が「ありがとう」と言って先に出て、
「…?」
後ろにいる筈の瀬尾が降りる気配が無いので不思議に思って振り返ると、やはり気怠げに腕を組んで立つ男。いや早く降りてよ。
「どしたの?」
「…今週俺、仕事つまってて、飲みに行くの厳しいかも。」
「あ、そっか…忙しいね。お疲れ様。」
こんな風に言われて相当残念に思うのは私だけなんだろうな。
でも別に毎週行くって約束しているわけでも無いのに、こうして律儀に知らせてくれるのはなんでなんだろう。
「もしかして」って期待をして、でもやはりのらりくらりと掴めない男に「まさかね」って思い直して、それを繰り返している。
「また来週にでも」そう言おうと口を開きかけた私に、瀬尾はにっこりと微笑む。
「じゃ、また。」
「、」
それだけを短く言って颯爽とエレベーターを出て行ってしまった。
「…何、なんか逢瀬でもしてたの?」
フラフラと自分もエレベーターを降りると、亜子は待っていてくれたらしい。
「…なんか、さっきの瀬尾変じゃなかった…?」
「そう?というかあいつの感情の変化に興味が無いわ。」
「…」
亜子は今日も今日とて、手厳しい。
「なんか、笑顔が硬い気がした、んだけど。」
「…ふーん?」
「…まあね、ただの同期の私が踏み込めることでは無いわ…」
「ねえ自分で自分攻撃して無事に死ぬのやめてよ。」
なんだか色々気分が下がってしまった。
それでもスマホを見ると「ちひろに会いたいよ〜」と、大学時代の友人達からメッセージが来ていて思わず微笑む。
私も久しぶりにみんなに会いたい。
そう思い、出席の返事をした。