君と私で、恋になるまで





「…うん。そうだね。」

"ちひろ。俺はちひろと付き合えた4年間は全然無駄だとは思わない。

こんな風に、決定的な何かが起こらなくても、終わることも、あるんだよな。"


一樹の声は切なく鼓膜を揺らして、鼻の奥がツンと痛むのが分かった。


「…私も、一樹には感謝しかないよ。沢山ありがとう。」


ふっと受話器越しに笑った彼は、じゃあな、と余韻を残さないと言わんばかりに電話を切った。


通話が切れた後も、私は暫く耳にスマホを近づけたまま動けないでいた。



4年間、心から好きだと思った人だった。

だけど。
少しずつ、少しずつ。
自分の気持ちも、相手の気持ちも、離れていくのに気付いていた。


紡いできた時間の愛しさが、私をずっと踏み留めていた。


___あ、ダメだ。


そう思った瞬間溢れ始めた涙に、思わず苦笑い。


こんな顔みんなに見せたら驚かせてしまう。
そう思った私は、ロビー奥の窓を開けてデッキへと出る。


ふわり、春の生温い風が頬を慰めるように撫でて、それがなんだか余計に悲しくなった。

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