泣きたい訳じゃない。
兄は今、高田ホテルズの子会社となる「デュアルレジデンス」という会社の社長をしている。
世界各国のペンションやセカンドハウスを買い取り、留学生や長期出張する社会人、休暇でロングステイする人達にシェアハウスとしてレンタルしている会社だ。

元々、高田ホテルズの一部署だったのを兄が事業拡大し、最近、別会社の設立に至った。

兄が進出するのは、私達が幼少期に暮らしたことがある街をメインにしている。
これは、口にしないけど「渋谷」の家を離れた兄なりの両親への感謝の気持ち、恩返しなのだと思う。

私は、そんな兄を秘かに尊敬している。

拓海と兄が組めば、お互いにとって大きなメリットになるだろうし、最強のダッグになるのは明白だ。

だから、問題はそこではない。

兄は歳が離れているせいか、私を溺愛し、特に恋愛関係については干渉が激しい。今までも、兄が原因で上手くいかなかった恋愛もあったくらいだ。
でも、私が兄に反発しても無駄だった。

「所詮、あいつは莉奈のことをその程度にしか思っていなかったんだ。」

そう言われてしまうと、返す言葉がなかった。

もし、そんな兄が私と拓海の関係を知ってしまったら、ビジネスどころではなくなってしまうかもしれない。

私は拓海と兄の対面に向けて、作戦を練り始めた。
胸騒ぎは収まらないけど・・・。
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