泣きたい訳じゃない。
次は、拓海にメールをする。

バンクーバーでシェアハウスを展開している日本企業の一つ「デュアルレジデンス」は最近設立されたばかりで、社長は大学の先輩で既に簡単に話をしているので、いつでも話を進められることを書き込んだ。

もう午後3時を過ぎているので、拓海からの返信は明日だろうなと思っていたら、直ぐにオフィスの電話が鳴った。

「もしもし、莉奈?」

オフィスでの電話時で「莉奈」と呼ぶなんて珍しい。
オフモードに入ってるのかな?

「はい、渋谷です。まだお仕事されてるんですか?もう、そちらは夜ですよね。」

「家で資料の整理をしてたら、渋谷さんのメールが届いたから。」

「明日でもいいですよ。」

「いや、早く話が聞きたくて。向こうの感触はどうだった?」

拓海には珍しく、興奮気味だ。

「はい、あちらも私達の事業に興味をお持ちでした。いつでも、話を進められそうです。」

「ありがとう。すごく助かったよ。こっちでは、滞在先のホームステイなんかは既に留学事業者に押さえられてるから参入が難しくて。」

拓海の役に立てたことが私も嬉しい。

「デュアルレジデンスは、高田ホテルズの子会社なので、資本としても信頼できますし、うちとも既に取引があるので、契約の稟議も通りやすいと思います。」

「高田ホテルズの子会社なのか?」

「はい、そうです。昨年までは一部署だったのを別法人を立ち上げたそうです。」

「そうか、高田ホテルズの・・・。」

拓海の勢いが急に減退しているのが、電話越しに伝わって来た。

既に、高田ホテルズとは取引があるから、以前に何かあったのかな。そんな話を聞いたことはないけれど。
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