泣きたい訳じゃない。
「電話って何?」

まさかの母が口を挟んでくる。
兄が空気を読まないのは、明らかに母親譲りだ。

「莉奈が付き合ってる男。空気も読まずに、うちに来てる時に、テレビ電話してくるような奴。」

「お兄ちゃん、もう止めてよ。」

「莉奈、見合いはどうだ?俺がいい人を紹介してやるから。」

「お見合いなんてしないから。」

「いいじゃない、お見合い。莉奈もこんな素敵なお家に住みたいでしょ。」

母がまさか兄の味方に付くとは・・・。
最強のコンビになってしまった。

「嫌なら断ればいいだけだろ。見合いって言うより紹介するだけのカジュアルな感じだから。」

「そうよ。出会いは多いに越したことはないわよ。」

「絶対に行かないからね。」

何故、彼氏がいる妹にお見合いを勧めるのか。
本当に自分勝手な兄を持つと妹は苦労する。

真美さんは苦笑いをするばかりだ。

「ピンポーン。」

真美さんがインターフォンに応えると、お見合いの話は収まった。

真美さんの妹さんだ。私は心の中で感謝する。
< 34 / 70 >

この作品をシェア

pagetop