訳アリなの、ごめんなさい
「っ、、こんなに締めるのねぇ」

純白のドレスを着て戸惑うセルーナ妃は先ほどから締め上げられるウエストに眉をしかめている。

それはそうだろうなぁと、私は頷く。

「オルレアの衣装はどちらかというと胸から下はゆったりのラインが多いですものね。」

もしくはウエストに布がない、肌の露出が多いものだ。

妃のスタイルを見るに、そうした衣装が似合っていたのだろう。
今着せられているドレスも彼女の黒髪が映えて似合ってはいるのだが、やはり慣れない締め付けに戸惑っているようだ。

「我が国のドレスは殆どがこんな感じで締め付ける事が多いのです。私もオルレアから戻ってこの締め付けを思い出した時には息が詰まりましたわ」

そう笑って彼女の前に回る

針子達がせっせと彼女の身体のラインに調整をしている。



「少しお胸の締め付けを緩めて差し上げて。ウエストも、すこし」

針子達を束ねている恰幅のいい婦人に、伝える。

「しかし、、、」
非難めいた視線を向けられる。

そりゃあ、そうよね。

まぁでもきっと、私はこういう時のためにいるのだろう。


「姫様は十分スマートでいらっしゃるし、婚礼の儀は長時間に渡るのよ?
この締め付けに慣れている私達ならまだしも、慣れない上にやる事も多いのですものご体調を崩されたら大変だわ」

締め付けによりいかに細く見せるかがステイタスのような我が国のドレス事情は正直、私は好きではない。しかもそんな事に慣れない妃殿下を無理に付き合わせるのは、なんか違うと思うのだ。

「しかし!」

まだ何か言いたそうな、指示役にわたしは、はぁっと努めて大きく息を吐く。

「なにも完全に緩めろと言ってるわけではないわ、ヴェールも被られるし、お花も持たれるのだから、ウエストなんてそれほど目立たないわ!それよりご体調を崩されずにお式を終える事の方が大切でなくて?」


もし、万が一ご体調を崩したら誰が責任を取れるの?貴方できて?と水を向ければ、たちまち顔色を変えた彼女は

「かしこまりました」と、針子達に指示を出し始めた。

そんなこんな、悪役を務めながらなんとか、ドレス合わせが完了して、出来上がった妃殿下はやはりとでも美しかった。

「着心地はどうでしょう?」

「だいぶ楽よ!これなら大丈夫だわ」

恐る恐る聞いた指示役の女性に、妃殿下は満足そうに微笑んでその労を労った。

抜け目なく賢い方よね。
その姿を感心しながら見ていると、ユーリーンが煌びやかなネックレスを持ってくる。

散りばめられた粒の石と、メインとなる雫型の石は光の加減で青に輝く。

「姫様の御髪とお眼によく映えますわね」

「本当すてきねぇ」

感嘆の声をあげる私と妃殿下の言葉を聞いて

くすりと宝石商の女性が笑った。

「王太子殿下が自らお選びなさいましたのよ。
妃殿下にはこれが一番お似合いだと!」



「まぁドレスもですわ、これが一番妃殿下を美しく飾ると」

続いてドレスを仕立てたメゾンのオーナーも声をあげる。


「殿下が?」

妃殿下が静かにもう一度鏡の自分を見つめなおす。

とてもよく似合っていて彼女の良さが出ている。
晩餐会で一度だけ姿を見ただけの彼がこれほどまで妃殿下に似合う物を用意できるなんて、彼がどれだけ妃を好きかが分かる。


多分同じことを思ったのだろう。妃殿下の表情がわずかに曇った。

今、何を考えているのだろうか。

そんな事を思いながら、わたしはその姿を静かに見守った。
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