訳アリなの、ごめんなさい
「妃殿下はアリシア嬢とお部屋へお戻りいただきました。例の訪問者もお帰りいただきました。」

報告をすると、執務机で書類にサインをしていた殿下が、ピタリと手を止めてこちらを見上げた。

「あぁ、よかった。ご苦労だったな。ブラッド」

そう言ってサインを終えた用紙を脇に避け、こちらにしっかりと身体を向けると、顎に手を当てて、思案するように唸る。


「しかし、ウェルシモンズ伯爵は何が狙いなのだろうな?」


「わかりません。ここまで妹に粘着する兄も聞いた事がありません。」

同意をしてそう告げれば、殿下の瞳がスッと細められた。


「金か?」

「確かに、自分達の浪費で領地運営もままならないらしいとは聞いていますが」
  

「彼女の給金目当てか、まぁその線はありそうだな?」

金に困っているところに、妹が王宮のしかも王太子のそば近くに勤めるとなれば、給料もさぞ良いだろうと、そんなゲスな発想をしてもおかしくはない。

「由緒あるウェルシモンズ家が、嘆かわしいな。何故彼女のお父上は、あんなのを後継者にしたのだろうな?
あれだけ優秀な御令嬢がいて、お前と言う婚約者がいたのに。」

「そこは分かりかねます。恐らく彼女のお父上の功績を考えても、一時的なアリシアの爵位の相続は認めていただけたのでないかと、多くの者が首を傾げていたと、聞いていますが」

「だろうな、エルドナ・コーネリーンはじめ、その3代前までの当主達が我が国にもたらしてくれた利益は余りある。そんな話があれば、俺が王ならすぐに認めると思うぞ!」

殿下がそう言うくらいなのだから、エルドナ・コーネリーン自身もそんな事は理解していたはずなのだ。考え直せば考え直すほど不可解である。


「まぁいずれにしても、面倒だな。次があったら俺が出よう」


「殿下が自らですか!?」

それはやりすぎではないかと、その場にいた臣下全員が思うが。

「このままではアリシア嬢が迷惑をかけていることを苦にして、ここを去ると言いかねない!
今彼女に居なくなられたら私が困るのだ!」


妙に真剣に言われて、皆があぁと納得する。


いまや王太子ご夫妻2人の調整役はアリシアなのだ。折角上手く動き始めた所で、彼に言わせると城攻略の作戦の途中なのだそうだ。

いわばアリシアは参謀役でなくてはならない存在だという。

要は自分のため、、、。

「私の権限でこの宮への出入りを制限するくらいはできるだろう。しばらく彼女はここで生活するわけだし、諦めさせるさ」
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