訳アリなの、ごめんなさい
手首を見る

当時消える日がなかった傷痕はもうない。

背中の傷はどうしても消えないらしい。

身体が治ると同時に、硬く縮こまっていた心も癒えてきた。

しかしそれがまた新たな苦しみの始まりだった。

異常な環境下に置かれた精神が、身の安全を確保した時起こるもの。トラウマと言うものらしい。

時に魘され、薄暗い部屋におびえ、彼が部屋に来た時間になると、息苦しくなる。

初めの頃は、暗闇を照らすランプの色や、馬を駆る鞭の音など、小さな発端で発作が起こり、パニックになり意味もなく逃げ惑った。

ありがたいことに叔母夫婦がつけてくれた医師はとても優秀で、私のそれに適切に対処してくれた。

叔母のもとで1年の月日を静養して、問題なく日常生活が送れるようになってきた。


仕事を手に入れ、ブラッドに再会した。


そして、またあの男が私の周りを彷徨き出した。

なぜ?

もう私は彼等に何の利用価値もないはずなのに。

私に幸せになる資格がないとでもいいたいのだろうか。

「ふふ、もうそんな夢見られるなんて思ってもないわよ」
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