訳アリなの、ごめんなさい
「あの、アリシア様。先程のお話にあったように、ウェルシモンズ領にお戻りになる事はございますか?」

せっかくだから、2人でお話でもと気を使われ、私とミシェルはバラ園を散策しながら話をする事になった。

カロニック公爵邸にはそれはそれは美しく立派なバラ園がある。

不安そうに私を見るミシェルに、私はどの程度彼女が知っているのかわからず、少し困る。

「恐らくは、わたしがウェルシモンズ領に戻ることはないと思いますの。事情は嫁がれたので有ればご存知かと思いますが、あそこに私の家族はおりませんから」

「そうですか」
少し寂しそうに彼女は笑う。

「トラン様がもしアリシア様にお会いできたら、一度戻ってきて話をされたいと仰せだったので」

そう言う彼女の目には何の含みも悪気もなくて、彼女が何も知らない事を理解した。

「先程、カトリーナ様と妃殿下が仰せの通り、今はこちらでのお仕事が忙しくて、それに兄は以前王太子殿下のご不興を買ってしまった上、貴族院からも処罰を受けたばかりです。今の立場の私が直接関わるのは、王家から我が家へ余計な不興を買うきっかけになるといけません」

少し突き放すように、そこは譲れないと告げる。

「たしかに、そうでございますわね。立場も弁えず、申し訳ありません。」

きっと彼女は、夫に言われたことを従順にこなしただけなのだろう。しかし、、


「貴方は何も悪くないわ、、でも彼らは時々自分の置かれている立場も分からず、行動する所があるので。ご自分を守る上でも、十分気をつけてくださいね。」


それが時に彼等の、とんでもない行動の歯車の一つに利用されてしまいかねない。


「それは、はい。理解しています」

どうやら彼女も賢い女性なのだろう。
少しばかりは、彼らの異常な様子に気がついている様子だ。

そうであれば少し安心だ。

多分彼女は苦労する。
だが、それをわたしが助けてやることはできない。

だから忠告することしかできない。

巻き込まれないでと。

「あと、これを、、、」

そう言って差し出された物を見てわたしは一瞬息を止めた

白い封筒


「これは?」


「貴方に渡すように義母様から」

「、、、、」

受け取るべきか、迷う。眉を寄せ、思わずそれを睨みつけてしまった。

「ごめんなさい、内容は分からないので、でもご迷惑ならお渡しできる隙がなかったと伝えます」

そこでも何かを敏感に察した彼女は、怖気付いたようにその封筒を少し引いた。


「でもそうしたら、貴方が嫌な事を言われない?」


彼女は少し困ったように笑う。

「大したことは言われませんから」

それなりに、言われるらしい。


「なら受け取るわ。でも読むかは叔父と相談しますと伝えていただけますか?」


「はい。確かに」

彼女は、神妙な顔で頷いてくれた。
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