燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「ええっと……まぁ……そう、かもね」

 拓海は苦笑した。
 その笑顔を見て、私は、自分の少ない記憶を手繰り寄せる。


「だから婚約者が未来のあなたって、都合のいい夢見てるのよね」


 私は拓海を見て言った。拓海は首をかしげる。


「……え? 病院のこと覚えてるってこと? 僕とつばめちゃんが初めて会ったのはつばめちゃんが16歳の時だよ。覚えてるのは15歳までの断片的なことって言ったよね?」
「違う。もっと前に会ってる。断片的だけど、覚えてる記憶の中に拓海がいる」
「それはいつのこと?」
「うーん……あたしが小学2年の時かしら。拓海は高校生くらいだった。あってる?」
「年齢的には合ってそうだね……」

 拓海はつぶやくと、顎の下に手をやって、うーん、と考えた。



「拓海、助けてくれたわよね? 病院の近くの公園で木から降りられなくなったところで……」
「え?」


 拓海はじっとあたしを見る。

 そして、驚いたように、あぁ! と言うと
「もしかして、あの時、木から降ってきた子⁉」
と言った。
< 148 / 350 >

この作品をシェア

pagetop