燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「とにかく、二人でもう一度暮らしてみなさい。でも身体は無理しないこと。天馬先生も、ハウスキーパーさんを頼んでおいてくれてるみたいだから」
「……そこまでしなくても」
別に思い出してからでいいじゃない。入籍しているなら急ぐ必要もないし、なおさら。
こんな状況でも、まだ先延ばしにしようとしているのは私の悪い癖だろうか。
母はまっすぐ私を見ると、
「二人で過ごせば、二人で過ごした楽しい時間をきちんと思い出せるわよ」
と言う。
「別に思い出したいってわけでもないんだけど」
私がつぶやくと、母は、まったくもう、と言いながら、いつでもうちによっていきなさい、その時は連絡しなさいよ、とくぎを刺す。結局母は、うちに帰ってこいとは言ってくれなかった。
いつの間にか、わが家がわが家じゃなくなってて、なんだか寂しい。
だって私の記憶でいけば、昨日まで父と母と一緒に住んで、一緒に食事をしていたのだ。