燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


―――なんだかいろいろと腑に落ちない。


 母と別れて、トボトボと病院の廊下を歩いて病室まで戻る。
 そして、自分の病室につくと、ベッドの横に知らない大男が立っていて、腰を抜かしそうになった。

(って、誰⁉)

 男は、身長がすごく高くて190はあるだろう見た目だった。ガタイも良く、『熊』のようだ。
 顔は彫りが深くて濃い。日本人離れしている顔立ちに、もしかしたら今まで何かで関係した外国籍の方だろうか、とも思った。しかし、思い当たる顔がない。


 ところで、そんな人がなんで私の病室に……。


「な、なにか、ご用ですか?」

 意を決して、声をかけた。

 振り向いた男のもつオーラが少し怖くて、精一杯出した声は、思ったより小さかった。
 私が言うと、男はこちらを振り返る。


「……あぁ、部屋、間違ったようだ」

 そう言って、私の横を通り過ぎようとする。

 その時、その男が松葉づえで、包帯を右足に巻いていることに気づいた。それに、長くこの病院に出入りしていると地域の人には詳しくなるが、見たこともない人だ。
 まぁ、春からの三か月の記憶がなかったら知らない顔も増えてるかも……、と思い直す。それにちょっと怖かったし、関わるのはやめておこう。

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