燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「なら」

 天馬先生がなだめるような優しい声で言う。
 私は、きゅ、と自分の唇を噛んだ。

 そして、

「……今日だけ」
「え?」

「こういうの、縁もあると思う。だから、とりあえず今日だけ……その、そういう事するとき、あれ……しなくてもいい」

と勇気を出して、言った。


 なんて事言わせるのよ!
 少しお酒が入ってても、そういう事を言うのは恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

 天馬先生の顔が驚くほど輝く。


「ほんと⁉」

 なんでそんなに喜ぶのよ⁉

 今まで散々色んなことしてたけど、子どもに関してだけは、天馬先生は、私が覚悟できるのをずっと待ってくれていたようだった。

 私はちょっと後ろ暗くなりながらも、
 それに甘えてしまっていたのだ。


 でも、最近、自分をとことん甘やかしてくる天馬先生に、天馬先生が子どもと一緒にいる姿も想像してしまう。


「う……。でも、そんな簡単に子どもってできないですよ? きっと」
「うん、でも、今日はちょうどいい日だから」


 天馬先生がつぶやいた。
 その意味はよくわからなかった。

「……どういう意味ですか?」
「いや、なんでもない。じゃ、行こうか」

 天馬先生は最高の笑顔で言って、私の手を握る。
 その温かい手に絆されて、私は小さく微笑んだ。

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