春永すぎて何が悪い?
ゲーム
髪を切った。
めっちゃ切られた。

明日からどうしよう。
どうやってセットしよう。

鏡を見ながら自分でも見慣れない姿に、俺は悩んでいた。

一瞬で髪も乾いた。

高校生のときみたいな短髪。
爽やか過ぎる。

「同期の及川くん」か。

同期ってことは同じ年かな。

奈穂ちゃんはいつもああいうオシャレで会話も上手い人たちに囲まれてるんだ。

及川くんと仲良く話してるのを見て、なんか嫌だった。

でも仕事なら仕方ないな。

奈穂ちゃん、俺への声のトーンと及川くんへの声のトーンが違った。
笑顔も違った。

また鏡の中の短く切り落とされた自分の頭を見る。

これかっこいいかな。
眉毛も見えるじゃん。

気分が重い。
奈穂ちゃんからも、りっちゃんからも、店へのダメ出しもされたし。

やっぱり女一人だと入りにくいよなあ。

俺は暗くなった気持ちを落ち着かせるために、いつものゲームの電源を入れた。

ゲームをやってる間は無になれる。

面倒くさいいろんな事から逃げられる。

未来のことは未来悩もう。
今日はとりあえず、考えるのをやめる。

俺がゲームしてると、珍しく奈穂ちゃんが隣に座ってきた。

「見て、この人ダンさんに似てない?」

ちょっと面白いと思ったのに、奈穂ちゃん、全然笑ってくれなかった。

そしてすぐ寝室に行った。
冷たかった。

及川くんと話してる時、すごい笑ってて楽しそうだったのに。

考えるのやめよう。

俺はその後1時までゲームした。
< 27 / 61 >

この作品をシェア

pagetop