生贄になる予定が魔界の王子に頭突きを食らわせてしまいました
 口づけとは、こんなにも甘いものだったのか。

 自分の口の中で他者の舌が動き回るという未知の体験に、まともな抵抗ができない。

 シーツの上に緩く押さえつけられているだけの手をはね除けられないのは、何か不思議な力を使われているからなのだろうか。

 上手く力が入らず飲み込みきれなかった、どちらのものともわからない唾液が唇から零れて羞恥に頬が熱くなる。

 身体がふわふわと夢見るような感覚は神殿で嗅がされた香の影響を思い出すが、この背中にぞくぞくと走る甘い痺れをアリシアは知らない。

「気持ち、良いですか?」
 唇を()みながら淫魔が囁く。

「僕の唾液、甘いワインのような味がするでしょう? 淫魔の血の影響で体液に誘淫効果が有るので、全身が敏感になって酩酊したようになるんです」

 顎に伝う唾液を舐めとられて肩が跳ねた。

「フフフ、潤んだ瞳で顔を赤くする貴女は本当に可愛くて食べてしまいたい。このままだとドロドロにしてしまうので今のうちに脱ぎましょうね」

 そう言って身体に力の入らないアリシアから慣れた様子でドレスを脱がせ、自身もマントや上着を脱ぎ捨てる。

 露わになったクライヴェルの上半身は、アリシアが今まで治療のために見てきたどの人のものより白く美しかった。しなやかに引き締まっていてまるで彫刻のようで目が離せない。

「僕の身体が珍しいですか? 人間とほとんど同じ(かたち)でしょう?」

 でも、貴女に見つめられると幸福で目眩がします。と、ちゅっと目尻に唇が落とされる。

 それだけで、アリシアの身体の奥の何かが疼いた。

 額に、まぶたに、頬に、首筋に。胸への刺激は続けたまま次々に口づけられた。

「貴女の肉体(からだ)はとても甘い匂いがします」

「薔薇水……! 薔薇で、私じゃ、ないっ」

「そうなんですか? 僕をここまで魅了する香りは薔薇なんかじゃなく、貴女自身だと思いますけど……」

 脇腹に。へそに。足の付け根に。そして――

「僕以外の誰かがここに触れたことは?」

「ないっ……! あるわけない……っ」

 いつの間にか埋められた指が、狭いアリシアの形を確かめるように何度も中を行き来する。
 やがて奥にざらりとした部分を探り当てたクライヴェルは執拗にそこを攻めたて、今までに経験したことのない快楽の波がアリシアを攫った。

「凄い……僕の指に絡みつくように動いていますよ。貴女が感じてくださって嬉しい……」

 その顔は、本当に、本当に嬉しそうで。
 この顔をずっと眺めていたいとぼんやりとした頭で考える。

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