生贄になる予定が魔界の王子に頭突きを食らわせてしまいました
(お守り、人気有ったのになぁ……)

 毎晩月に祈りを捧げ、けが人の治療と神殿の清掃をする。
 それが巫女に課せられた責務だったが、生涯を巫女として終える気などさらさらないアリシアは18になったら神殿を飛び出すためにあの手この手で小銭を稼ぎ貯めこんでいた。

 最近もっとも稼ぎが良かったのが神殿に懺悔に訪れる人にこっそり販売していたアリシアお手製のお守りだ。

 信仰心を持つ者はみなが平等。
 そう説きながらも優遇されるのは例え神殿においても王族や貴族で。

 町の人々が救いを求めて苦悩や後悔を口にしても、神官たちはもっと神殿に寄付をして月に祈りを捧げなさいと言うだけだった。

 きっかけはそんな神官の態度に不満げだったパン屋のおかみさんの夫への愚痴を清掃中のアリシアが親身に聞いたことだった。

『あの娘と話すと心が軽くなるのよ!』

 そうおかみさんが宣伝し神官にではなくアリシアに話を聞いて貰うことを目的に神殿へ訪れる人が増えた。

 治療と清掃以外の仕事をしているのが神官に見つかると説教をされたので充分に話を聞けなかった時はお詫びにと手作りのお守りを渡した。

 信仰心などちっとも持ち合わせていないアリシアの作ったものでも『こんな美人の巫女様の手作りなんてきっと御利益が有るね』と人々は喜んでくれた。

 そうして、今度はお守りを目的にアリシアのところへ訪れる人が増えてそれが商売になった。お守りを手にした人の笑顔を見るのが好きだった。

 それなのに何故成人として認められる18才まで後2年という時に20年ぶりの青い月が現れるのか。
 そして何故自分が花嫁に選ばれるのか。

(まぁそれは年頃の巫女の中で孤児なのが私だけだからだろうけど。信仰が足りないってよく怒られてたし……)

 ベッドを殴るのに疲れたアリシアは自分に着せられた青いドレスを見下ろした。

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